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 ありのままを受け入れる多様性の時代において「自分を愛そう」と前向きに生きることを推奨するメッセージが散見されている。反面、これを押し付けと感じる人も存在し、自分が嫌いであることを吐き出せないストレスも抱えているという。さらには“自分嫌い”な人が発した自虐的な言葉を聞いた周囲の人々が、ストレスを感じるという連鎖も起きている。『ABEMA Prime』では、「自分が嫌いなまま生きていってもいいですか?」の著者であるフリーライターの横川良明氏を招き、自分嫌いな人の生き方、また自虐的な言葉が周囲に及ぼす影響を考えた。

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■自分のことを嫌いではダメなのか

 横川氏は「自分嫌い」を真正面から受け止めているタイプだ。「自分の事を好きになれない。『嫌いな自分が好きなのではないか』と言われるとイラっとする。好きな人の立場から物を言っているなと思う」と述べる。自分を好きになれという圧力が強く感じられるが、それに対する反発もあるようだ。「ずっと自分が嫌いだった。小さい頃からいじめられることが多く、自分を肯定できる瞬間がなかった」と、自己嫌悪の根本には過去の経験が影響しているという。他人がSNSに自撮りを投稿するのを見て「この人たちは自信があるんだなと感じてしまう」とも語った。

 人との距離感にも悩むことがある。例えば人の呼び方だ。「人のことを下の名前で呼べないし、呼ばれたこともない。ドラマや漫画で見かける男同士の呼び捨てには憧れがあるが、実際に自分に置き換えると躊躇する」。ありのままの自分を愛する方法や、自己肯定感を高める手段が世の中に溢れているが、「自分も昔はそういうことをやっていたが、全く幸せになれなかった。むしろ放っておく方が良いと思うようになった。この世の中もそんな感じになってきた。この変化はすごろくを振り出しに戻された気分だ」と感じているという。

 他人に愛されたいという気持ちもなかったわけではない。ただし「今はもうない。それを持っている方が不幸の源だと感じ、誰からも愛されない方が楽だと思っている」という独自の自己防衛策に行き着いた。

■自虐的な言葉はどこまで許せる?

 自分が嫌いな人のコミュニケーションとしてよく出てくるのが自虐。自分のコンプレックスや悩みなどを吐き出しているだけとも捉えられる一方で、それを聞いている周囲の人々にも、何かしらの影響が出ている。フリーアナウンサーの柴田阿弥は「自虐はいじりのコミュニケーションの自分版」という表現をした。「本当は高度なコミュニケーション技術で、お笑い芸人のプロがやるようなものだから、全然誰もうまく処理できない。ネガティブな言葉は呪いだし、他人はネガティブな言葉を投げてもいいゴミ箱ではない。私は大人として、ネガティブな言葉を吐いてもいいけど分量は気をつけないといけない。それはマナーだと思う。ずっと投げ続けられるとやはり疲れてしまう」と、言葉を扱うプロとして自虐の難しさを説いた。

 これに横川氏は「そういうことを考えると、そもそも自虐が良くない。もともとは『そうやって自分を悪く見せることで、自分の肯定感が下がるからやめよう』という話だったのが、いつの間にか『聞いている人が不快だからやめなさい』という時代の流れになった。僕はそれが怖い。『私が不快だからお前の口を封じる』みたいなものじゃないか。それを正義というのも、暴力的だと個人的には思っている」と、懸念も示した。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「あくまでバランスの話だ」と指摘。「音声プラットフォームで毎日配信しているが、自分の顔に子どもの頃からコンプレックスがあったと話をしたら、コメントで『でも軽い自己否定というのは自分のコンプレックスの癒しになる』と教えてくれた。自分の顔がハンサムじゃないと気にしているが、それを話したことでみんなが『そんなことないよ』と言ってくれると癒やされる、軽い癒やし」が自虐をきっかけに得られることもあると事例を紹介した。「自分のコンプレックスを笑いに変えることによって解消につながる、そういう心理的な効果はたしかにある。かといって、ずっとそれを言い続けるとやはりウザいので、ちょっと言うくらいに抑えておくと人間関係も平穏に終わる」と提案した。

 一連の話を受けて、横川氏は「僕が一番大事にしてほしいことは、自分を嫌いなことと自分を責めることは分けて考えること」と強調した。「別に嫌いだったら嫌いのままでいいのに、嫌いな自分が悪いとか、好きになれない自分が悪いと思っちゃうと不幸なことになる。『自己肯定』ではなくて『自己受容』くらいでいい」。
(『ABEMA Prime』より)

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