在日クルド人団体「日本クルド文化協会」(埼玉県川口市)が、協会の事務所周辺でのクルド人排斥などを主張するデモの差し止めを求めた仮処分申請について、さいたま地裁(市川多美子裁判長)は21日、申し立てを認める決定を出した。協会の代理人によると、在日クルド人へのヘイトスピーチデモの禁止について仮処分命令が出されるのは初めてとみられる。
決定では、神奈川県在住でデモの主催団体代表を名乗る男性に対し、協会事務所の半径600メートル以内で、在日クルド人を非難・中傷する演説、ビラ配布などをすることを禁止した。
申し立てによると、男性は「日の丸街宣倶楽部」の代表と称し、2024年2月以降に事務所周辺で少なくとも8回のデモを実施。拡声器を使い「自爆テロを支援するクルド協会は日本にいらない」「クルド人を日本からたたき出せ」などと主張した。一連のデモが人格権の侵害に当たるとして、協会が11月11日付で仮処分を申し立てた。
在日クルド人を巡っては、23年ごろからネット交流サービス(SNS)上で差別的な内容の書き込みが増加し、埼玉県内でデモが行われるようになった。男性は自身のSNSで11月24日にもデモを行うと告知していた。
在日コリアンへの差別的なデモが社会問題化した川崎市などではヘイトスピーチを禁止する条例が制定されたが、埼玉県内には同様の条例がない。協会の代理人を務める金英功(キムヨンゴン)弁護士は「今回の裁判所の決定は、あくまでも差別的な行動が起きてからの事後的な抑止手段。事前に差別を抑止するためには、埼玉県や県内市町村が差別禁止条例の制定に向けて速やかに動くべきだ」としている。【加藤佑輔、田原拓郎】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。