和歌山市で岸田文雄前首相のそばに爆発物が投げ込まれた事件を巡り、木村隆二被告(25)に対する検事の取り調べで人格を否定する発言があったとして、弁護人が検察に抗議していたことが関係者への取材で明らかになった。「社会に貢献できていない」「引きこもり」などと話していたとされ、最高検は「不適正な取り調べだった」と認定した。
被告は2023年4月15日、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港で、衆院和歌山1区補選の応援演説に訪れた岸田氏の近くに、火薬を詰めた殺傷能力のあるパイプ爆弾を投げつけて爆発させたなどとして、殺人未遂など五つの罪で起訴されている。岸田氏は無事で、警察官と聴衆の計2人が軽傷を負った。
複数の関係者によると、担当していたのは和歌山地検の男性検事。被告は事件当日に現行犯逮捕され、その後となる5月ごろの取り調べで「捜査機関はいろんな人に感謝される。家に引きこもっていると感謝されることもないでしょう」「かわいそうな人」などと発言していたという。
他には「法律の専門家は私も含めてメジャーリーガーだとして、木村さんは小学校の低学年くらいの知識」とも話していた。被告が事件前、現行の選挙制度は憲法に反するとして国を相手に民事裁判を起こしていたことに関連して発言したとみられる。
被告は取り調べに対して黙秘していたとされ、意思表示のために目を開けたり閉じたりすることを求める場面もあったという。
被告がこれらの言動を問題視し、接見した弁護人に伝えて発覚した。弁護人は被告の尊厳を傷付けたとして地検に口頭で抗議した。後日、最高検監察指導部宛てに「苦情申し入れ書」を郵送し、最高検は不適正な取り調べだったと認めたという。
地検の花輪一義次席検事は取材に対し、証拠に関わる内容は明らかにできないとしたうえで「個別事件に関わるご質問にはお答えを差し控えます」とコメントした。
被告の公判は25年2月4日から始まり、4回の審理を経て同19日に判決が言い渡される予定。【藤木俊治、駒木智一、安西李姫】
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