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 幼いころに抱いた恐竜への熱い思いを持ち続け、大発見へと近づこうとしている人がいる。岡山理科大学の講師・千葉謙太郎氏は日本を代表する恐竜学者の一人だ。日夜研究に明け暮れ、先月も兵庫で見つかった化石が新種であると解明し、国内外から注目された。また数年前には世界で初めて「恐竜のがん」を発見。その千葉氏が今ターゲットにしているのが、恐竜の化石から有機物を抽出するという試み。7000万年以上前の骨の化石を溶かしてみると、何やらプルプルとしたものが抽出され、これが恐竜の有機物かと調査を進めている。『ABEMA Prime』では千葉氏に、最先端の恐竜研究について、様々な角度から話を聞いた。

―恐竜の骨の化石を溶かして出てきたプルプルしたものは何か。

 おそらくはタンパク質が残っているんじゃないかと。環状になっているのがおそらく血管。これ自体は1990年代の終わりごろに報告はあって、骨は有機物であるコラーゲンと、無機成分であるリン酸カルシウムの組み合わせ。リン酸カルシウムを取り除いたら何か残ったというのが報告された。その後、いろいろ喧々諤々、議論が続いているがいまだに決着がついていない。僕らのチームでも研究を初めて、この前溶かしてみたらプルプルが出てきた。あのプルプルからすごいことがわかるかもしれないと思ったり、7000万年前のものから有機物が出てきたら興奮する。

―日本は恐竜の化石は量が出るのか。

 かつては出ないと言われていたが、最近はすごくたくさん出ている。福井が有名で、他にも兵庫などがある。日本だと、重要な発見はアマチュアの方が最初に発見されて、そこから本格的な発掘が進むことが多い。アマチュアの方もかなりすごい方々。いきなりポンと行って見つけるのは難しいかもしれないが、たまに小学生が見つけるということもある。

―あまり深く掘らなくても出てくるのか。

 掘って見つけるイメージがあるが、どこにあるかわからないのに掘っていてのやりようがない。すごく歩き回って、骨がちょこんと出ているところを掘っていくと、中に広がっていることがある。(日本で見つかる場所は)海の地層にも多いし、この間は自分の同僚が、香川で初めて恐竜の化石を見つけた。地元の岡山でも見つけてみたい。

―世界の恐竜研究における日本の立ち位置は。

 20年ぐらい前には日本に恐竜研究者はほとんどいなかったが、そこからものすごい勢いで増えた。世界の学会でもある程度の地位になった。やはりアメリカは強くて、標本がたくさんあるのと、研究者が多い。ヨーロッパも強い。

―プルプルの研究が大発見につながる?

 大発見につながればいいなと思ってやっているし、そこそこいいデータも出ている。決めきれるだけの突き抜けるデータがまだ出ていない。“プルプル”は有機物であるのは間違いないが、それが本当に恐竜由来なのかというのが厄介なところ。よく言われるのが、骨の中がスカスカなので、そこに今生きているバクテリアなどが粘液などを出して、それが充填して残っていたとしたら、それは恐竜時代のものではなく、今の時代のものになる。これが恐竜のコラーゲンであれば、こういう結果が出るだろうという結果は出続けている。

―ティラノサウルスに毛が生えていたなどの説は。

 ティラノサウルスは、その仲間で一番後に出てきたもの。それよりも古い、ご先祖様にあたるグループの種類は、羽毛が全身に生えていたのが見つかったので、進化していて生えてもいいのではという解釈だった。ティラノサウルスやそれに近いものの皮膚の化石は、それを見ると鱗の化石しかなくて、毛穴がなさそう。ただし全身がきれいに見つかっているわけではないので、背中だけ毛を生やすような復元が比較的一般的な定説だ。

―図鑑に出ている恐竜の色は。

 千葉氏 ティラノサウルスに関してはわかっていない。自分が子どものころは本当に想像だったが、最近だと皮膚や羽毛の色が一部わかっている恐竜がいる。環境によって色のつき方が変わるので、体色が復元されたものから光がよく当たるところに生きたとか、森林に生きていたと言われる恐竜もいる。

―ティラノサウルスはどこにいた。

 北アメリカにいた。日本には近い仲間の歯が見つかっている。モンゴルからティラノサウルスにすごく近いタルボサウルスというのが見つかっているが、そのころは北米と陸続き。もしかしたら日本の地層からも出てくるかもしれない。

―恐竜の進化系の動物は。

 鳥は分類上、完全に恐竜。分類学上、鳥も爬虫類。鳥全体がすっぽり恐竜の仲間に入っている。ワニは鳥以外では一番恐竜に近い。

―恐竜は隕石で絶滅したと思われていることも多いが。

 言葉的には「鳥類を除く恐竜が絶滅した」というのが正確な表現だ。鳥類は体が小さかったのも生き残れた要因の一つかもしれない。エサが少なくても生き残れた。

―ユカタン半島に隕石が落ちて恐竜が絶滅というのは定説か。

 あそこにぶつかったのもあるが、何年か前にもう一発当たっていたという論文があった。

―声もわかってきたことがある?

 日本の研究者が調べた。モンゴルの保存のいい化石を見ると、咽頭骨が残っていて、その形を見るともしかしたら鳥っぽい発声をしていたかもしれない。

―恐竜の嗅覚、視覚は。

 ティラノサウルスなどはかなり鋭かったのでは。脳が入っているスペースをCTスキャンすると、中に脳の形と、その前に匂いを司る部分があり、その大きさで嗅覚が鋭かったかもしれないという研究がある。脳のサイズは人間の方が大きい。あんまり賢くなかったのでは。

―今後挑戦したい研究は。

 有機物の件は、いろいろな先生と一緒に楽しんでやっている。いい研究にできれば(恐竜の)復活は厳しいが(笑)。
(『ABEMA Prime』より)

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