ガチャガチャ=佐藤賢二郎撮影

 「ガチャガチャ」の愛称で親しまれるカプセルトイ。最近は数千台のマシンが並ぶ専門店も出てきた。千葉県船橋市のカプセルトイコンサル会社「築地ファクトリー」社長で、一般社団法人「日本ガチャガチャ協会」代表理事を務める小野尾勝彦さん(58)に、その魅力を聞いた。【石塚孝志】

 ――いま、どれぐらい人気なのですか。

 ◆日本玩具協会によると、2023年度の売り上げは10年前の約2・3倍の640億円です。メーカーは約40社あり、大手2社だけで7割を占め、協会未加入のメーカーを加えると800億円を超すとみられます。

 ――発祥は?

 ◆1880年代、ニューヨークの駅のホームで、ガムが出てくる無人販売機がルーツといわれています。1930年代に衛生面からカプセルを使うようになり、日本製の精巧なセルロイド製ミニチュア玩具が人気となりました。日本には65年、米国の商社からマシンの供給を受けた「ペニイ商会」が駄菓子屋などの店先に置いたのが始まりです。

 ――日本では、どのような進化を。

 ◆四つのブームがありました。第1次は83年の「筋肉マン消しゴム」の大ヒット。第2次は95年、玩具が彩色されるなど品質が向上し、ディズニー関連の玩具も加わり、大人も巻き込みました。

 第3次のきっかけは2012年発売の「コップのフチ子」シリーズです。コップに腰掛けたポーズの女性フィギュアで、「可愛い」と若い女性の間で評判になり、SNS(ネット交流サービス)で写真が拡散されました。これはメーカーとクリエーターのコラボ作品で、これ以降、デザイン性の高い商品が続々と登場しています。

 ――今は第4次?

 ◆20年ごろ登場した大人の女性をターゲットにした専門店の影響が大きい。女性が入りやすい白を基調とした店舗などができ、今では利用者の7割が女性。また外国人旅行者のお土産にも人気です。コロナ禍では、閉店したスーパーなどの空き店舗に専門店ができるケースも増えました。

 ――日本人はガチャガチャが好き?

 ◆私なりの考察ですが、日本人は古来より小さくて可愛いものをめでて集めたがる習性があるようです。古代の土偶や江戸時代の根付(ひもの端に付ける留め具)などが典型です。また、「何が出てくるかわからない」ものに一喜一憂するのは、おみくじ文化につながるのかもしれません。

 ――最近の話題は。

 ◆毎月、500の新商品がリリースされています。基本的に再生産はしないので一期一会です。最近増えたのが「ネタ系」と呼ばれる用途不明の不思議な商品群。「バスの降車ボタン」や「妹からの手紙」「赤の他人の証明写真」などが話題になりました。「お兄ちゃんへ」と書かれた手紙が入っていたり、知らないおじさんの証明写真を若い女性がスマホケースに貼っていたり。他にも企業や観光協会などとのコラボ商品も増えています。

 ――独特の世界です。

 ◆コンプライアンスや安全性がきちんとしていれば、何を入れてもいい。「富士山の空気の缶詰」というのもありました。「こんなものが出ちゃった」と面白がってSNSで拡散させれば「いいね!」をもらえてほっこりできる。わずか数百円でワクワクできる、こんなにユルくて、ちょっといかがわしいものはない。はまる人はどんどん増えるでしょう。

小野尾勝彦(おのお・かつひこ)さん

 船橋市出身。大学卒業後、商社勤務を経て、カプセルトイ大手の「ユージン(現タカラトミーアーツ)」に入社。2019年に独立し、築地ファクトリーを設立した。

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