能登豪雨で床上浸水した仮設住宅から、使えなくなった冷蔵庫を運び出す石川県のボランティア=石川県輪島市で2024年9月24日午後1時39分、手塚耕一郎撮影

 能登豪雨は、元日の能登半島地震の被災地に残る傷痕をえぐるように、石川県を襲った。迅速な復旧に向けてボランティアの力が求められる中、地震の時には被災市町の受け入れ態勢が整うまで待っていた県は今回、すぐに被災地へ派遣した。ただ、被災市町には受け入れにあたって解決すべき課題があり、早急さに戸惑う声も上がっている。

「ストレス吐き出せた」

 輪島市内の仮設住宅団地「宅田第2仮設住宅」は、床上まで浸水した。そこに、県が派遣したボランティア40人が団体で訪れたのは、豪雨から3日後の24日だった。

 ぬれた家財道具を運び出し、泥をかき出す。断水で水が使えず、ウエットティッシュで壁にこびりついた泥を拭き取るボランティアもいた。

 その姿に、住民の女性は少し元気をもらったようだった。

 「仮設以外の人と話ができて、水害でたまったストレスが少し吐き出せた」

 今回、県の動きは早かった。馳浩知事は豪雨翌日の22日夕、県の災害対策本部会議で「ボランティアの力が必要」と訴えた。ネットで募集したところ、40人の枠はすぐに埋まった。

受け入れ態勢整っていない市町も

 一方、市町ではボランティアセンター(ボラセン)の受け入れ態勢が整っていない所もある。

能登豪雨で床上浸水した仮設住宅で、泥だらけになった布団を運び出す石川県のボランティア=石川県輪島市で2024年9月24日午後1時48分、手塚耕一郎撮影

 輪島市内のボラセンの施設は豪雨で土砂をかぶり、再開に向けた復旧作業が続けられている。ボランティアが使うモップや水切り、洗浄機などを新たに用意する必要もある。

 さらに、街中に流れ込んだ土砂やがれきによって、個人のボランティアが来た時に車をとめる駐車場がなくなってしまったという。市のボラセン担当者は「個人で直接来るボランティアを受け入れるには時間がかかりそう。支援してくれる人は欲しいが、バランスが難しい」と話す。

 輪島市に隣接する能登町も、似たような状況だ。ボラセンを運営する町社会福祉協議会の職員は、まずは被災者が何を求めているのかの把握が先だという。

 「どんな作業が必要なのかニーズが分からないので、すぐにはボランティアを受け入れられない」

 一方、今後ボランティア活動が進むと、取り除いた土砂や災害ごみが増えてくる。市町はごみの仮置き場の少なさやごみ処理費の負担を懸念する。

 輪島市は24日、豪雨を受けて「ごみの仮置き場を3カ所設置した」と市民に告知し、翌日に受け入れを始めた。既にあった集積所に加えて、新しく2カ所増やしたという。

住民が見守る中、能登豪雨の影響で使えなくなった家財道具を運び出し、玄関のドアを戻す石川県のボランティア(中央)=石川県輪島市で2024年9月24日午後1時35分、手塚耕一郎撮影

 市環境対策課の友延和義課長は「どのくらいの土砂や災害ごみが出るのか、被害の全容が分からない。これでも足りない」と心配する。

ごみ処理費用の負担を懸念

 能登町の大森凡世(かずよ)町長は、23日の県の災害対策本部会議で、県や国にこう訴えた。「地震と同じレベルの財政支援をお願いしたい」

住民の女性(右)が心配そうに見守る中、能登豪雨で床上浸水して浮き上がった仮設住宅玄関の床板を直す石川県のボランティア=石川県輪島市で2024年9月24日午後1時21分、手塚耕一郎撮影

 能登半島地震が特定非常災害に指定されたことを意識しての発言だった。指定されると、ごみの処理にかかった費用の98%前後を国が補助してくれる。

 被災地では、こうした課題や懸念にも県が向き合ってほしいという思いがある。輪島市のボラセンの関係者は「地元の受け入れ準備もできていないのに、早々に派遣したのは県のパフォーマンスだ」と苦々しげに語った。

 災害ボランティアに詳しい阪本真由美・兵庫県立大大学院教授は「水害や土砂災害の『プロ』やベテランのボランティアが最初に支援に行くので、態勢は徐々に整っていくだろう」と見ている。

 「水害だと、家財をどけたり土砂を除去したりするのが大変で初動で人手が要る。これから支援を考えている人は、受け入れ先の状況を確認した上で現地に行ってほしい」

 県は、ボランティア関係者らを交えたオンライン会議で、作業の枠組みなどを話し合うという。

サイト通じて応募可

 公益財団法人「石川県県民ボランティアセンター」によると、能登水害のボランティアは、ウェブサイト「令和6年(2024年)能登半島地震・石川県災害ボランティア情報」で募集している。

住民の女性(右)が心配そうに見守る中、能登豪雨で床上浸水して浮き上がった仮設住宅玄関の床板を直す石川県のボランティア=石川県輪島市で2024年9月24日午後1時20分、手塚耕一郎撮影

 サイトには、現地で活動する際の服装などに関する情報が載っている。個人で参加したい場合は「新着情報」をクリックして、予約フォームを通じて応募できる。

 団体の場合、被災した12市町のボラセンから応募が可能という。財団法人の担当者は「活動時は暑くても軽装ではなく、肌の露出が少ない服装で、家屋での作業時にはアスベスト(石綿)対策としてマスクを着用してほしい」と話している。【水谷怜央那、国本ようこ、砂押健太、深尾昭寛、矢追健介、洪玟香】

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