和歌山県上空で観測された紫金山・アトラス彗星=2024年9月25日午前4時55分ごろ、津村光則さん撮影

 「世紀の大彗星(すいせい)」との呼び声もある紫金山・アトラス彗星が地球に近づいている。日本では10月中旬に見ごろを迎え、日没後の西の空で観測できそうだ。四半世紀ぶりに肉眼でも観測できる彗星になるのではと天文ファンの期待が高まっている。

 紫金山・アトラス彗星は2023年、中国・南京の紫金山天文台などが発見した。太陽系の果てにあり、無数の彗星が集まる「オールトの雲」から来たとみられる。9月27日に太陽に最も近づき、地球の北側へと移動。10月12日、地球に最接近する。その後は太陽系を飛び出したきり帰らない、地球にとって1回限りの出合いとなる。

 すでに南半球で観測報告が相次いでおり、国内でも23日ごろから日の出前の東の地平線付近で、望遠鏡を使うなどして観測され始めている。現在の明るさは3等級ほどで、肉眼での観測は難しい。

 彗星の尾が光を反射する条件が整えば「世紀の大彗星になる」との予測もあるが、彗星に詳しい国立天文台の渡部潤一上席教授は「明るさの予測は非常に難しい」と慎重な見方を示す。彗星は氷でできており、途中で崩壊する可能性もあるが、「彗星の核が大きくしっかりしており、10月中旬まで持ちこたえるのではないか。現在の明るさのままなら双眼鏡で観察できるだろう」と渡部さんは語る。

 国内で条件に恵まれ、肉眼で観測できたのは、0等級より明るくなった1997年のヘール・ボップ彗星が最後とされ、久々の彗星の天体ショーが待ち望まれる。渡部さんは「一般の人でも、尾を引いた彗星を見られるチャンスであることは確かだ」と力を込める。【寺町六花】

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