ベンチで開幕戦を見つめる水原一平容疑者=ソウルで2024年3月20日、AP

 米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手(29)の銀行口座からブックメーカー(賭け屋)に不正に送金したとして11日に訴追された元通訳の水原一平容疑者(39)。日本の国税庁にあたる米内国歳入庁(IRS)の文書には、暗号化されたメッセージアプリを通じた賭け屋との生々しいやりとりの一部が記載されている。

 「おいイッペイ。金曜日の2時なのになぜ電話に出ない。今ニューポートビーチで(大谷選手が)犬と散歩しているのが見えるぞ。彼のところへ行って、どうすれば君と連絡が取れるか聞きに行こうか? すぐに電話をくれ」

 2023年11月、連絡が滞ったことにいらだった賭け屋は、水原容疑者にこんなメッセージを送っていた。これに対し、水原容疑者は「超忙しかった」などと釈明。それまでのやり取りでは、賭け屋に信用取引枠の上限を上げるよう再三依頼していた。「私が金を払わないことを心配する必要はない!」と伝えたこともあった。賭け屋の名前は文書では匿名だが、米メディアはカリフォルニア州在住のマシュー・ボウヤー氏と報じている。

 文書によると、水原容疑者が大谷選手の口座から最初に不正に送金したとみられるのは21年11月15日で、その額は4万10ドルだった。それから送金額は雪だるま式に膨れ、24年1月にかけて不正に送金された額は1600万ドル以上(約24億5000万円)に上った。

 地元紙ロサンゼルス・タイムズなどで違法賭博疑惑が初めて報じられた今年3月20日、水原容疑者はドジャース開幕戦のため滞在していた韓国・ソウルから「報道を見たか?」と賭け屋にメッセージを送った。

 賭け屋はこう返信した。「見たけど、全部でたらめだ。どうみても君は彼(大谷選手)から盗んでいない。肩代わりしてもらったことはわかっている」

 この時、水原容疑者は初めて不正を告白したという。

 「厳密に言えば、私は彼から盗んだ。もうおしまいだ」

 翌21日にソウルからロサンゼルス国際空港に降り立った水原容疑者を待っていたのは、米国土安全保障捜査局(HSI)の捜査官だった。捜査官は、水原容疑者の携帯電話をその場で押収した。

 「私はギャンブル依存症だ」と告白した水原容疑者。21年12月から24年1月までの間に1万9000回近くの賭けをしていたという。約1億4225万ドルの勝ちに対し、負けは約1億8293万ドル。純損失は約4068万ドル(約62億円)に膨らんでいた。勝ち金は水原容疑者の口座に入金されていたという。【ニューヨーク八田浩輔】

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