入学式では生徒が順に名前を呼ばれ、元気に起立した=伊勢崎市今泉町で2024年4月11日午後6時50分、田所柳子撮影

 群馬県内初の夜間中学「県立みらい共創中」(飯嶌幸校長)の開校式が11日夜、伊勢崎市今泉町の同中で開かれ、1期生となる10~60代の35人が入学した。日本語や教科を学習する機会がなかった県内在住の外国人や日本人が学ぶ喜びをかみしめた。【田所柳子】

 「私はここで皆様と一緒に学び、友達を作りたい」。新入生代表としてあいさつした太田市出身の1年生、内田真理奈さん(24)はこの日、入学式の壇上で同級生たちに呼びかけた。前日から式の直前まで何度も何度も壇上に上がり、あいさつする練習を繰り返した。入学へ背中を押してくれた父親もこの日、見守った。

新入生代表の内田真理奈さん=伊勢崎市今泉町で2024年4月11日午後7時、田所柳子撮影

 内田さんは中学校から不登校となり、自宅からほとんど家を出ることなく通信制の高校を卒業した。4年前、父に誘われて原付きバイクの免許を取るため、「初めて家を出た」という。免許取得が自信になり、自動車などの免許も取った。外で運転するようになり、再び学校で勉強して、友達作りにも挑戦したいと決意した。

 同中学は15歳以上で十分に学習できず、学び直しを目指す県民が入学でき、中途入学も可能。年間約1万円の教材費以外はかからない。ブラジル9人、ペルー5人、フィリピン4人、中国3人など10カ国出身の外国人が28人で8割を占める。

 生徒は伊勢崎や太田、前橋などから通う。毎日午後6時から国語や数学など40分の授業が4回あり、通訳の支援員もいる。今後は仕事で授業に出られない生徒向けにオンライン授業も準備する。

県総合教育センター内に開校した県立みらい共創中=伊勢崎市今泉町で2024年4月11日午後7時40分、田所柳子撮影

 式典では、山本一太知事らに続き、臂泰雄伊勢崎市長が「ここで学び、次のステップへ踏み出した時、目の前には大きく広がる世界がある。後ろには多くの仲間が続いている」と祝福した。平田郁美県教育長は「皆さんは生まれたばかりの中学の生徒になった。皆さんと一緒に中学の歴史を作ることがとてもうれしいです」とわかりやすい日本語で呼びかけた。

 保護者席では、西アフリカのマリ出身の男性(40)が兄の子どもの晴れ姿を見ながら、「自分も入学したくなった。日本語を話すことはできるが、読み書きができない」と話した。孫が入学するブラジル出身の女性(80)も「この年でも学び直したい」と語った。外国人の妻が入学した日本人男性は「妻は幼いころに十分学べず、懸命に日本語も勉強したが、新聞を読み、仕事でもコミュニケーションを取るのが目標。応援したい」と見守った。

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