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 労働力不足が深刻化している日本。この状況が「さらに加速する」と予測したリポートが話題になっている。

【映像】想定以上…2050年まで減り続ける日本の労働人口(グラフ)

 リポートのタイトルは「単身世帯化の日本経済への影響」。8月にみずほリサーチ&テクノロジーズがリリースしたものだ。

 ブースト(加速)の燃料は「単身世帯化」と「FIRE願望」。

 リポートを執筆したみずほリサーチ&テクノロジーズ 河田皓史主席エコノミストは「子ども一人当たり3000万円とも言われる子育て費用がなくなることで『稼がなきゃいけない金額』や『消費行動』にも大きな違いが生じる」と推測。「自分1人が生きていく分だけ稼げばいい」という考えの人が増えれば労働力が下がるのではないかという仮説を立てて日本経済に与える影響を分析した。

 リポートでは大胆にも「労働にやりがいはない」「生活に必要なお金が貯まった時点で人は働かなくなる」と仮定し、今後の世帯数予測などを加味してシミュレーション。

 すると、2050年にはこれ以上ないほど危機的な状況が待ち受けていることが判明。

 元々、2050年の労働力人口は2020年比で1500万人強と見られていたが、ここにさらに「50歳以上の単身世帯のFIRE傾向が強まる」という設定を加えると、「単身世帯のFIREによる減少幅」と「単身世帯化による減少幅」の影響でさらに200万人の下押し効果があらわれるのだ。

 河田氏は単身世帯化とFIRE化が結びつくと、より人手不足は深刻な事態を招くと話す。

 「労働需給が逼迫して賃金に上昇圧力がかかることで企業にとってコストの増加要因となる。そうなると、企業は利益を補填するために価格転嫁をせざるを得なくなりインフレにつながる可能性もある」

 少子高齢化だけでなく、単身世帯の増加も人手不足を加速させる要因になるかもしれないという視点から行われた今回の調査。

 これまで国が力を入れてきた結婚・子育て政策だけでなく、より多面的な議論が必要になっていると河田氏は指摘する。

 「婚姻数・出生数を放置していると20〜30年後にはとんでもない人手不足になって、社会機能が成り立たなくなる可能性がある。具体的な策を考え出すために、結婚や子を持つことへの障害になっているものについて、原因究明が求められる」

 リポートについてThe HEADLINE編集長の石田健氏は「『1億円貯めてFIREしました』という人がメディアで話題になったりするが、実際の数はかなり少ないだろう」と述べた上で社会構造における課題を指摘した。

 「従来、日本のシミュレーションではほとんど夫・妻・子どもという“標準的なモデル”で考えて制度設計しているが、様々な生き方・モデルについても想定する必要がある。加えて、 FIREした人、もしくは親の介護などなんらかの事情で一度労働市場から抜けた人でも戻れる制度設計にしていくことも重要だ」
(『ABEMAヒルズ』より)

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