全国有数のコメ産地で知られる山形県鶴岡市で8月30日、庄内地方のトップを切り新米の収穫が始まった。全国的な品薄の状況は「庄内米」の産地にも及んでいる。地元農協は、流通が始まる9月中旬ごろの解消を見込むが、一部では7月の水害被害の影響が見通せず、出来秋への期待と不安が入り交じる。
気温30度を超える鶴岡市の水田。市内の専業農家、菅原和行さん(62)は、ねじり鉢巻き姿で日傘を付けたコンバインに乗り、実った稲穂を刈り取った。県内外の顧客から「コメが手に入らないので早く送ってほしい」といった催促が相次ぐ。
一方、従来取引のなかった業者から10トンも新規大口契約の依頼が寄せられるなど新たな動きも。「記録的な冷夏でコメ不足になった『平成の米騒動』以上だ」とため息をつき、当初予定を前倒しした収穫作業に追われた。
市内のスーパーのコメ売り場では「入荷未定」の張り紙があったほか、「一家族1袋」といった制限付きの売り方も目立つ。
同市の「産直あぐり」では7月から品切れ状態に。5月ごろから1袋30キロ入りのコメがよく売れるようになり、例年新米が流通し始める9月中旬を前に在庫が底を突いた。ただ、運営会社の沢川宏一社長(77)は「今年は、昨年同様に高温の影響で収穫が5日から1週間早く推移している。平年より入荷は早い」と指摘。入荷次第、販売を再開するとして、消費者に冷静さを保つよう呼び掛ける。
東北地方を襲った7月末の記録的な大雨で、酒田市を中心に一部水田が冠水や浸水に見舞われた。庄内町の「JAあまるめ」の担当者は「水害の影響がまだ見通せないが、今年の作柄は『やや良』とされている。中旬以降に新米の供給が始まれば、品薄感は徐々に解消されていくのではないか」と話す。【長南里香】
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