兵庫県職員の証人尋問を終え、記者会見で説明する県議会調査特別委員会(百条委)の奥谷謙一委員長(中央)ら=神戸市中央区の県庁で2024年8月23日午後6時32分、中田敦子撮影

 兵庫県の斎藤元彦知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題で、県議会の調査特別委員会(百条委)は23日、パワハラの有無を明確にするため、非公開で県職員6人を証人尋問した。終了後に記者会見に応じた委員らによると、複数の職員が知事から厳しく叱責されたり、その場面を目撃したりしたと証言した。パワハラ的言動について「業務上の指導」などと繰り返す知事に対し、ある職員は「腹立たしい」と発言したという。

 百条委での職員の尋問は初めてで、終了後に奥谷謙一委員長ら委員8人が会見した。

 委員らによると、告発文を作成、配布したとして停職3カ月の懲戒処分とされた元県西播磨県民局長の男性(7月に死亡)について、処分の検討の際に県職員が「公益通報の結果が出るまで処分を待った方がいい」と進言していたとの証言が出た。元局長は3月に告発文を報道機関や県議らに送付した後、4月4日に県庁内の公益通報窓口に通報したが、5月に処分された。ある職員は「(上層部は)文書を調査する気ははなからなく、作成者を特定して処分したいという意図を感じた」と証言した。

 また、ある職員は、知事が県の最高幹部とのやり取りで腹を立て、文具を投げたのを目撃したと証言。知事からSNS(ネット交流サービス)のチャットを通じて休日や深夜を問わず指示があり、プレッシャーを感じているという証言もあった。

 明確に「パワハラを受けた」という証言はなかったが、職員らは「人生で初めてこういうこと(対応)をされた」「自分は精神的にタフなのでダメージは少なかったが、他の人に(同じ事が)されているなら看過できない」と訴えた。県職員のアンケート結果が報道された後の8月20日、知事が「仕事なので厳しく指導することも必要だ」などと述べた定例会見について「腹立たしい」と述べた職員もいた。

 パワハラについての証人尋問は30日にも実施され、県職員と知事を尋問する予定。

 告発文はパワハラのほか、視察先からの贈答品受領、阪神・オリックス優勝パレード開催費用の寄付集めと補助金を巡る不正など七つの疑惑について記されている。

 元局長は百条委での証言直前の7月、同県姫路市の親族宅で死亡しているのが見つかった。これ以降、県職員労働組合が知事に事実上の辞職勧告を申し入れたほか、知事の右腕的存在だった片山安孝副知事が辞職。知事の側近の県幹部も体調不良で相次いでポストを降りるなど、県政は混乱に陥った。また、2021年の知事選で斎藤氏を推薦した自民党からも、辞職を促す声が上がった。

 知事は23日、報道陣の取材に応じ「今は業務に専念しつつ調査にも適切に対応していく」と改めて辞職を否定した。【中尾卓英、大野航太郎、砂押健太、中田敦子】

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