東京電力が福島第1原発にたまる処理水の海洋放出を始めてから24日で1年になる。この間、周辺海域のモニタリング結果に異常はなく、放出は着々と進んでいる。放出に伴う福島県産品の買い控えなどの目立った風評被害は国内では起きていないが、放出に反発する中国は日本産水産物の禁輸を続けており、影響は少なくない。
東電は現在8回目の放出を実施中で、これまで約5万5000トンを放出した。含まれるトリチウムの量は約8・6兆ベクレルで、福島第1の年間放出上限(22兆ベクレル)を下回る。東電が実施する海域モニタリングで検出されたトリチウム濃度は最大1リットル当たり29ベクレル。東電が上限とした、国の基準値の40分の1(同1500ベクレル)を大幅に下回った。国際原子力機関(IAEA)は7月、放出が国際基準に合致しているとする2回目の報告書を公表した。
処理水などをためるタンクは敷地内に1046基あり、約96%が埋まっている。東電は、放出で空いたタンクを2025年1月から順次解体して撤去する計画で、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)を取り出すための敷地に転用する。
ただ、燃料デブリに冷却水や地下水が触れてできる汚染水は現在でも1日当たり平均約80トン(23年度)発生し、処理水のもとになっている。政府と東電は、最長40年で福島第1の廃炉を完了するとしており、それまでに処理水の放出を終え、約880トンあるとされる燃料デブリを全量回収する方針だが、実現の見通しは立っていない。【高橋由衣】
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