大阪府警本部=藤田剛撮影

 強制執行を免れるために資金を隠したとして、大阪府警は22日、府咲洲(さきしま)庁舎(大阪市住之江区)に入居する「さきしまコスモタワーホテル」の運営会社社長ら2人を強制執行妨害目的財産損壊等の疑いで逮捕した。捜査関係者への取材で明らかになった。ホテルは賃料を巡って府と対立。賃料を滞納する一方で収益を隠していた疑いが強まり、府警は実態解明を進める。

 逮捕されたのは、ホテル運営会社の社長、小寺孝明(64)と、関連会社社長の誉田喜博(こんだきはく)(62)両容疑者=いずれも大阪市浪速区。府警は誉田容疑者がホテル経営の実権を握っていたとみている。

 捜査関係者によると、2人は2023年8~9月、旅行代理店が入金しようとした宿泊代金計約900万円を、別会社の口座に送金させ、強制執行を免れようとした疑いがある。

 ホテルは55階建ての咲洲庁舎の7~17階部分のフロアを府から賃借し、19年1月に開業した。しかし、同年11月分から賃料を滞納するようになり、府は20年11月、滞納金の支払いやホテルエリアの明け渡しを求める訴訟を起こした。ホテル側は庁舎のエレベーターから騒音がすると知らされておらず、ホテル側で負担する騒音防止費用と未払いの賃料が相殺されるべきだと訴えていた。

 23年3月の1審・大阪地裁判決は府の主張を認め、判決が確定する前に、ホテル側の資産を差し押さえる強制執行が可能な状態になった。

 これに対し、2人は運営会社の口座が差し押さえられ、資金が徴収されるのを防ごうと計画し、23年8~9月に別会社の口座に資金を隠そうとしたとみられる。府が24年6月に刑事告発し、府警は意図的な資金隠しの疑いがあるとみて調べていた。

 宿泊代金が送金されたのは、誉田容疑者らが管理する経営実態がない会社名義の口座だった。2人はこの会社の名前をホテル運営会社と同じ名称に変え、旅行代理店から怪しまれないようにしていたとみられる。入金された約900万円はその後に出金されており、府警は使途を解明する方針。

 府とホテル側の訴訟は24年6月、フロアの明け渡しと滞納した賃料の支払いをホテル側に命じる2審・大阪高裁判決が確定。府によると、滞納額は遅延損害金も含め、7月中旬時点で約40億円に上る。判決の確定を受け、ホテルは10月で閉館すると明らかにしている。【川地隆史、岩本一希】

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