伊豆諸島沖で墜落した海上自衛隊のヘリコプター2機。
事故はなぜ起きたのか。
元パイロットを取材すると訓練の難しさが見えてきました。

■空中で衝突か…海自ヘリ2機墜落1人死亡

伊豆諸島・鳥島の東およそ270km、海上自衛隊のヘリコプターが墜落した現場です。事故当時、この海域で、海上自衛隊のヘリコプター3機が潜水艦を捜索する訓練を行っていました。
20日、午後10時38分頃から、そのヘリコプター3機の内、2機と相次いで通信が途絶えたといいます。現場周辺から、機体の一部の他、2つのフライトレコーダーが近接した場所で見つかっています。
(海上自衛隊 酒井良 海上幕僚長)「この2機が恐らく空中において衝突したのであろうことが最も蓋然性が高い可能性と考えております」
墜落した哨戒ヘリコプター「SH−60K」は、全長およそ20m、幅16m、高さ5mで、定員は4人。墜落した2機に搭乗していた8人の内、1人は救助されましたが…
(海上自衛隊 酒井良 海上幕僚長)「本日未明に収容した隊員1名の死亡を確認いたしました。無念でなりません。収容された隊員の他7名については自衛隊として全力を挙げて捜索救難に当たっているところです」
現場の海域は、水深5500m。捜索は困難を極めるとみられます。現場で一体、何が起きたのでしょうか…

これは海上自衛隊のYouTubeチャンネルの映像。
「SH−60K」はこのように護衛艦に載せて運用され、主要任務は周辺にいる潜水艦の探知や攻撃です。映像では、隊員らが「SH−60K」に急いで乗り込み、艦上から飛び立つ様子が紹介されています。機体は4人乗りで、事故当時も、2機にそれぞれ4人ずつ搭乗していたと言います。事故機が所属している第22航空群のXには、「SH−60K」が救助訓練をする映像も―。
機体を海面近くまで降下させて、ホバリング。隊員がロープを伝って、海に入ります。そして、泳いで救助対象のもとへ。その間も、「SH−60K」は低空を保ち、救助対象を引き上げるという、過酷な訓練です。同じ部隊による、潜水艦の捜索訓練の映像。やはり低空で飛行し、海中の物体を探知する“ソナー”を海面に下ろします。今回の事故機は、このような訓練を夜間に行っていたとみられています。

■元海自パイロット語る“訓練の難しさ”

元海上自衛隊のパイロット小原凡司さんは…
(元海上自衛隊パイロット 笹川平和財団 小原凡司氏)「夜でもヘリコプターに限らず航空機は衝突防止灯と右弦灯・左弦灯というライトをつけていますので、パイロットは僚機がどこにいるかというのを目視でも確認をしていると思います。さらにはお互いにレーダーで僚機がどこにいるかというのは常に把握していますし、レーダーで近づけば後ろに座っている航空士、センサーマンから警告もなされると思います」

今回墜落した「SH−60K」の同型機は、2021年、鹿児島・奄美大島沖で、夜間の訓練中に接触事故を起こしています。それをきっかけに訓練時には、ヘリ同士が高度をずらして飛行するなどの対策が取られていましたが…
(海上自衛隊 酒井良 海上幕僚長)「高度につきましては、2021年の事故教訓の防止対策から高度セパレーションを行うということが対策として述べられています。今回の事故原因はまだまだ究明段階ですが、仮にこれをしっかり守っていたのであれば衝突は起こらない…なぜ高度セパレーションがとれなかったのか、著しく近接したのか、今後の原因究明の大きな課題」
ただ、元パイロットの小原さんは、ソナーを使用する際には、同じ高度になる可能性を指摘します。
(元海上自衛隊パイロット 笹川平和財団 小原凡司氏)「例えば対潜戦を行うときなどはソナーを下ろすときにはホバリングをしなければいけないわけですが、そのホバリング高度まで高度を下ろし速度をゼロにする。ソナーを使うときには必ず全ての機体が高度を変える運動をするので、重なるところは出てくるということです」
自衛隊は、回収した2機のフライトレコーダーを分析し、事故原因の解明を進めるとしています。

(木原稔 防衛大臣)「今回このような事故が起こったことは痛恨の極みであります。収容した隊員の死亡が確認されたことにつきましては防衛大臣として衷心より哀悼の誠を捧げたところでございます。ご遺体につきましては横須賀病院に移送し検視を実施中であります。現在も引き続き自衛隊や海上保安庁による懸命な捜索を残り7名に対して継続中であります。ヘリ3機体制でこの訓練にあたっていたということでもう1機の当該機についてはいまその搭乗員に対して、聞き取り調査を行っているところでございまして、まだその内容等についていま確認中というところでございます」


4月21日『サンデーステーション』より

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