記者会見する小林製薬の小林章浩社長(中央)=3月29日午後、大阪市北区(門井聡撮影)

小林製薬が「紅麹(べにこうじ)」成分を含む機能性表示食品のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」など3製品の自主回収を発表して22日で1カ月がたった。サプリ摂取後の腎疾患などの健康被害は死者5人に上るなど、社会に大きな不安を与えている。原因を巡っては国の研究機関を中心に究明が進むが、まだ謎が多い。同社は対応の遅れを批判され、機能性表示食品の制度見直しの議論が始まるなど、波紋は広がり続けている。

原因究明続く

厚生労働省によると、同社から報告のあった健康被害は18日現在で死者5人、入院(すでに退院した事例を含む)240人、医療機関を受診した人は1434人に上る。紅麹サプリ摂取との因果関係は不明なままだ。

国立医薬品食品衛生研究所で紅麹原料のサンプルを分析した結果、会社側が報告していた青カビから発生する天然化合物「プベルル酸」以外に、通常のサプリには含まれない複数の化合物を新たに検出。ただプベルル酸が人体に影響を与えるかどうかも含めて未解明の部分が多い。

ずさんな品質管理

紅麹原料は同社の大阪工場(大阪市、昨年12月に閉鎖)でつくられていた。厚労省と同市は今年3月30日、食品衛生法に基づき同工場を立ち入り検査した。工場は製造・品質管理に関する指針「GMP(適正製造規範)」の認証を取得しておらず、誤って床に落下した原料を一部出荷するなど、ずさんな品質管理も判明している。

紅麹原料は子会社や協力会社でサプリに製品化されていたほか、他のサプリ・食品メーカーなど52社、そこから173社の計225社(重複含む)に卸された。小林製薬はこれらの企業にも製品の自主回収を求め、業界は混乱。厚労省によると、225社の製品で過去3年間、健康被害は報告されていない。

制度見直しへ

一方、小林製薬は最初に医師から症例報告があった1月15日から、自主回収まで2カ月以上かかった。同社のコーポレートガバナンス(企業統治)だけでなく、行政への健康被害の報告義務があいまいな機能性表示食品制度のあり方を問い直す動きにもつながった。

消費者庁は今月19日、機能性表示食品制度のあり方を巡る専門家検討会で議論を開始。5月末をめどに方向性を取りまとめる。食品安全に詳しい科学ジャーナリストの松永和紀さんは「機能性表示食品制度は、事業者が安全性を評価し提供する情報を基に、消費者が摂取するかどうかを判断する仕組みの根幹から問題がある。機能性(効果)のエビデンス(科学的根拠)も弱いものがたくさんある。(制度を)廃止するのか、ガイドラインをより厳しくして第三者の目を入れるのかを考えるべきだ」と指摘する。(牛島要平、桑島浩任)

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