原発の使用済み核燃料の保管を巡り、中国電力が関西電力と共同で山口県上関町に建設を検討する中間貯蔵施設の完成見込み時期について、中国電が「十数年はかかる」との認識を持っていることが判明した。関電は福井県内の原発を運転するため、中間貯蔵施設を同県外に置くと約束。操業開始時期を「2030年ごろ」とする計画を示していたが、有力候補である上関町の施設は間に合わない可能性が出ている。
着工へのハードル高く
上関町の施設以外に関電が「選択肢の一つ」と説明した青森県むつ市の中間貯蔵施設については、東京電力などが出資して建設されたもので、関電の使用済み核燃料を受け入れることに地元が反発し、保管実現のめどは立っていない。原発敷地外の同種施設は国内で他に稼働していない。
福井県は県内に7基ある関電の原発を稼働する前提として、県外に中間貯蔵施設を確保するよう、関電に求めている。これを受け関電は23年10月、「中間貯蔵施設の他地点を確保し、30年ごろに操業開始」とするロードマップを県に示し、了承を得ていた。30年ごろには一部の原発内で使用済み核燃料を保管するプールに収容しきれなくなる可能性があるとされており、その行き先は見通せなくなっている。
今年12月に島根原発2号機の再稼働をめざす中国電は4月、上関町に保有する計画地での中間貯蔵施設建設の可否を判断するため、地質のボーリング調査を始めた。現地の大半が小高い山で平地はほとんどなく、使用済み核燃料の搬入は通常、専用港から行われるため、平地を造るための土木工事や港建設のための海浜の埋め立てなども必要になるとみられる。
中国電は「具体的な工事内容を示せる段階にない」と説明するが、23年9月の島根県議会防災地域建設委員会で、長谷川千晃・島根原子力本部長(当時)が「先行のむつの施設が約20年かかっているので、十数年はたぶんかかるのではないか」と答弁。中国電は毎日新聞の取材に「先行事例から竣工(しゅんこう)までに一定程度の期間が必要なことを表したもの」として、答弁内容を追認した。
上関町はボーリング調査を受け入れたものの、反発する周辺自治体もある。隣接地で計画された上関原発建設は、地元の激しい反対運動で実現していない。計画地付近については、環境省が「生物多様性の観点から重要度の高い海域」に抽出しており、環境保護団体が建設に反対する構えをみせるなど、中間貯蔵施設着工へのハードルも多数ある。
むつ市施設の受け入れもめど立たず
むつ市の中間貯蔵施設は東電が01年に立地可能性調査を開始し、地元了解や経済産業省による事業許可を経て10年に貯蔵建屋などの建設に着手。13年8月に建屋が完成した。ここまで12年かかったが、さらに原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査などを経て安全対策工事を実施。ようやく今年9月までに東電が柏崎刈羽原発の使用済み核燃料を搬入する計画を示したばかりで、関電の使用済み核燃料受け入れは想定されていない。
関電は上関町の施設について「調査中の段階であり、施設規模や工程などの今後の見通しは現時点で言及する段階にない」とし、「中間貯蔵施設についてはあらゆる可能性を追求して最大限取り組む」とコメントした。【大島秀利】
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