お盆を古里などで過ごす人たちの帰省ラッシュが10日ピークを迎え、各地の駅や空港は混雑した。ただ宮崎県沖の日向灘を震源とした8日の最大震度6弱の地震に伴い発出された「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の影響で、一部観光地では宿泊のキャンセルも出ている。専門家は帰省や旅行について「構えすぎず備えの再確認を」と冷静な対応を呼びかける。
「事前に息子夫婦と話をし、今回は海に連れて行かないことにした。夜寝ている時に揺れた場合も孫の安全を守れるようにしたい」
宮崎空港で東京から遊びに来た孫2人と再会を喜びながら、宮崎市の田中節子さん(74)は表情を引き締めた。孫で大学生の二葉さん(21)は「不安はあったけど、祖母が元気そうで安心した。滞在中は海に行けない分、おいしいものを食べたい」と笑顔を見せた。
宮崎空港では10日、到着ロビーに臨時情報が出ていることを知らせる看板を設置し、利用者に注意を呼びかける。3連休がスタートし、多くの帰省客や観光客で混雑する一方、観光地は影響が出始めている。
宮崎市の大型リゾート施設「フェニックス・シーガイア・リゾート」では、地震の影響もなく通常通り営業を続けるが、担当者は「キャンセルも出ている。海のそばにあるため津波のイメージがあるのかもしれない」と不安を口にする。
影響は宮崎県以外にも広がる。鹿児島県指宿市の「鹿児島砂むし温泉指宿白水館」では地震後の1週間に入っていた予約のうち60件近くがキャンセルに。担当者は「再び地震が発生する懸念があり、防災対策を改めて進めている」と語る。大分県別府市の温泉源を巡る「地獄めぐり」を運営する別府地獄組合も地震以降、営業に関する問い合わせが相次いでいるという。
宮崎市の海沿いの観光地「青島」では、一部で閉まっている店舗もあるものの観光客の姿も見られた。川崎市から訪れた女性は「地震があったとは信じられないくらい、人々の温かくてのんびりした空気に触れてほっとした」と話す。
京都大防災研究所の牧紀男教授(防災学)は臨時情報について「構えすぎずにいつもの備えを再確認する機会と考えるとよい」と強調する。「情報期間の1週間もあくまで目安なので、通常より巨大地震の発生率が高いことを意識して生活する。土地勘のない場所に行く際は、ハザードマップや避難場所などを確認して警報などが出た場合はすぐに身を守れるようにすることが大切だ」と話す。
旅先や移動中は「少しだけ災害を意識した備えを」と呼びかける。具体的には、車に非常食や水などを乗せる▽新幹線やバスで携帯を充電する▽車のガソリンの残量を確認する▽現金を持つ――ことをすすめる。
JR西日本によると、山陽新幹線のお盆期間中(9~18日)の予約数は2023年比2割増。JR九州によると、10日の九州新幹線の自由席乗車率は一部で160%を超えた。Uターンのピークは16日の見通し。
福岡空港を運営する福岡国際空港(FIAC)によると、期間中の予約数は国内線は23年並み、国際線は3割増。臨時情報の影響がどの程度出ているかは把握できていないという。【塩月由香、長岡健太郎、田崎春菜】
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