「震災の前には地震雲が出るんだって。前兆とか怖い」
「3本線の地震雲出てた」
宮崎県沖を震源とするマグニチュード(M)7・1の地震が8日に発生し、気象庁が南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を初めて発する中、SNSでは地震の前兆を示す「地震雲」があるかのような投稿が相次いでいる。だが、専門家は「科学的根拠はない」と指摘し、デマを拡散しないよう注意を呼びかけている。
雲研究者「気象学で説明可能」
「雲を目で見て、地震の影響を判断するのは不可能」。そう断言するのは、映画「天気の子」の気象監修を務めた雲研究者で、気象庁気象研究所主任研究官の荒木健太郎さん(39)だ。
荒木さんによると雲は高度や形などから「巻雲」「層雲」「積乱雲」など大きく10分類されるが、透明度などで細かく分けると400種類以上に及ぶ。中でも地震雲と勘違いされやすいのは飛行機雲や、しま模様の波状雲などというが、「世間で地震雲と呼ばれる雲はすべて、形や状態を気象学で説明できる」と話す。
自身のX(ツイッター)でも8日、「雲は地震の前兆にはなりません」と投稿。「地震が不安なら日頃からの備えを確認しましょう。雲は愛(め)でましょう」と呼びかけた。
荒木さんは「大きな地震が起こった直後は『地震雲』のほか、『人工地震』のような陰謀論などが広がりやすい。拡散する前に一呼吸置いて冷静になり、こうした『災害デマ』を広げないようにしてほしい」と呼びかけている。
40年前にも
地震雲を巡っては、大地震が起こるたび、取り沙汰されてきた。古くは1983年に秋田県沖で起きた日本海中部地震の後にも広がり、気象庁が「地震雲に根拠はない」とする見解を出したことが当時の毎日新聞で報じられている。
気象庁は現在も、地震雲については「地震とどのような関係で現れるのか、科学的な説明がなされていない」との立場。日本地震学会もホームページで、地震と雲を関連づけるメカニズムが分かっていないなどとして「地震研究者の間では一般に、雲と地震の関係はないと考えられている」と否定的な見解を示している。【岡田英】
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