パネル展を企画した土山祐実さん=浜松市役所で2024年8月7日午後2時4分、最上和喜撮影

 日本統治下の台湾の歴史や当時を知る人々が語るオーラル・ヒストリー(口述歴史)を紹介するパネル展が、浜松市役所1階ロビーで開催されている。企画したのは、同市出身で台湾大3年の土山祐実さん(24)。「戦争を経験した世代からじかに話を聞ける機会は少なくなっている。『無関係』や『人ごと』ですませられない日台の物語を多くの人に知ってほしい」と思いを明かす。16日まで。

 パネル展は昨年に続き2回目で、1895~1945年の日本統治下の台湾について当時の写真などを添えて解説している。目を引くのは、台湾に生まれ日本語教育を受けた「日本語世代」や終戦後に台湾から日本本土へ引き揚げた日本人(湾生)の「生の声」をできるだけそのままの形で書き起こした展示だ。「戦争は残された人たちの人生にも影響を与える」「戦争で学びたいことが制限されていた」――。理不尽な死や戦時統制が日常の中にあった時代を生き抜いた人々の複雑な胸中が語られている。

 土山さんは高校の授業で台湾が日本の植民地だったことを知り、にもかかわらず親日国家として認知されているのはなぜかという疑問を持った。その答えを見つけようと高校卒業後、台湾に語学留学し、2021年に台湾大に進学。大学での勉強の傍ら、つてをたどって、これまでに延べ30人以上の日本語世代や湾生への聞き取り調査を独自に行ってきた。「ある時、日本語世代の男性から『私たちは親日というより懐日で、あの頃を懐かしんでいる。アニメや漫画を通じて日本を好きになった若い世代の親日とは違う』と言われた。否定も肯定もなく戦争と向き合っていて驚いた」と振り返る。

 話をしてくれた人たちは苦しかったり、楽しかったりした当時の出来事を詳細に記憶していた。対話を重ねる中で土山さんは、ありのままの歴史を知ることが、戦争を自分事として捉えるきっかけになると考えるようになったという。昨年、帰国した際に市遺族会のメンバーと知り合い、会が毎年夏に実施している太平洋戦争の企画展に合わせて、土山さんの研究を紹介することを提案され、引き受けた。パネル展は後日、浜松復興記念館で常設展示される予定という。

 土山さんは「今この瞬間も世界のどこかで戦争は起きている。私たちが享受している平和な毎日はきっと当たり前ではなくて、だからこそ、戦争を知らない世代は現実を知る必要があると思う」と話している。【最上和喜】

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