南海トラフ巨大地震の臨時情報発表で、最大20メートル超の津波が予想されている徳島県美波町では、住民が災害への備えを急いでいる。
造船業を営む浜口慎二さん(42)の自宅は、目の前が海で海抜は9メートル。裏山に上る階段が避難路に指定されているが、草刈りなどの手入れが行き届いておらず、使えない状態という。日常の備えの大切さを痛感したといい、「早速、草刈りから始めたい」と話した。
「枕元に置いた着替え一式を持って高台の寺へ逃げ、見下ろすと津波に流された船が街中を行き来していて恐ろしかった」。雑貨業の大西藤吉さん(90)は、昭和南海地震(1946年12月)の光景を鮮明に記憶する。津波が引いた後に自宅へ戻ると、高さ約2メートルの浸水の跡があった。
大西さんは今も同じ場所で妻(91)、娘2人と暮らす。同町西由岐の港近くにある自宅は海抜約2メートル。南海トラフ地震が起きると12分後に約12・3メートルの津波が押し寄せるが、車椅子生活の妻は自力で歩くことができない。
指定避難所は78年前と同じ高台の寺だが、車椅子を押して坂道を上らなければならない。「妻を置いて逃げることは絶対にできない」。命を守ることができるのか、自問自答を繰り返しているという。【山本芳博】
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