「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の発表から一夜明けた9日、被害が想定される東海地方では、自治体や企業などが対応に追われた。【荒川基従、永海俊、町田結子、大原翔、真貝恒平】
愛知県は午前10時半から災害対策本部会議を開き、本部長の大村秀章知事は「当分の間は24時間体制で情報収集や警戒に当たっていただきたい」と県幹部らに指示した。
同県岡崎市は8日夜、安全性に不安のある住宅の居住者や土砂災害の危険がある地域の住民のため、学校など20カ所に自主避難所を開設。男性1人が身を寄せたが、既に帰宅した。9日夕からは、空調設備の整った2カ所に変更した。
知多半島の先端に位置する同県南知多町は14日まで、防災無線で昼と夕の2回、家族の安否確認の手段や家庭の備蓄品、避難先や避難ルートなどについて改めて確認するよう呼びかける。日間賀島などの島を抱えるため、担当者は「支援が後手後手になると助けられないので、備えを徹底したい」と話す。
沿岸観光地は
愛知県沿岸部のホテルでは、お盆シーズンを目前に予約のキャンセルも出ている。田原市のホテルによると、キャンセルの連絡が数件あったほか、「地元の海水浴場は通常通り営業しているのか」といった問い合わせが寄せられているという。
蒲郡市は市内の海水浴場を管理・運営する各観光協会などに対し、緊急時に備えて津波フラッグを点検したり、避難場所を確認したりするなどの対応を指示した。西浦観光協会の貝塚孝雄事務局長は影響について「今年は気温が高すぎて元々、客足が減っており、まだ普段と変わらない。週末の状況を見ないと何とも言えない」と首をひねった。
交通にも影響
JR東海は東海道新幹線の三島-三河安城間の上下線で今後1週間程度、全ての列車が通常より速度を落として運転。紀勢線の特急「南紀」(名古屋―新宮)と東京から高松、島根県出雲市までを結ぶ寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」など特急列車の一部を1週間程度運休する。
企業は
中部電力は臨時情報が出た後、本店や支社それぞれに社員1人以上が24時間体制で待機し、常時連絡が取れるようにした。運転停止中の浜岡原発(静岡県御前崎市)では8日、対策要員の社員約300人が、設備の巡視や油、可燃性ガスなどを扱う「危険物施設」の点検をした。現在、同原発では社員約30人が待機し、連絡体制を維持している。
町では…
名古屋市内のホームセンターには防災グッズを買い求める人々の姿があった。
ホームセンターコーナン名古屋北店(同市北区)では、午前9時の開店から1時間ほどで飲用水の2リットル入りペットボトル約600本が売り切れた。このほか、家具転倒を防止する器具や携帯トイレなども売れ行きを伸ばしている。
1月の能登半島地震の際、同店では水缶やウオーターキャリーを買い求める人々が多かったという。鏡味悟朗店長(43)は「防災グッズの問い合わせも多く、酷暑もあり、断水に備えた飲用水の確保、水の保管への意識が高まっているようだ」と話す。
「焦らず訓練の機会に」
初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」。どんな心構えと準備をすればいいのか。危機管理が専門の愛知県立大の清水宣明教授は「焦らず、巨大地震への訓練の機会にすればいい」と捉え、冷静な対応を呼びかける。【太田敦子】
清水教授の話は以下の通り。
もともといつ発生してもおかしくなかった。データ的にこれまでと状況が変わったわけではないので、これを機に災害への備えを思い出して、徐々に進めていけばいい。
必要な備えはまず水。飲用に1人1日2リットル、1週間分は欲しい。お茶でもいい。生活用はお風呂にためておくか、大きなゴミ袋に入れて口を縛っておけばいい。近くに川があればバケツを用意しておくと便利だ。
巨大地震のリスクは従来と変わらないので、帰省や旅行などの行動を変える必要はないが、もしもの時にどう行動するかを考えておく。ただ、1週間たてば安心というわけでないことを忘れないでほしい。
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