南海トラフ巨大地震への備えを呼び掛ける臨時情報(巨大地震注意)の発表から一夜明けた9日、各地では病院や自治体の職員らが避難の前倒しや備えの確認を急いだ。10日から始まるお盆の連休を前に、被害想定の大きい和歌山県や高知県の行楽地では海水浴場の閉鎖や宿泊客のキャンセルが相次ぐなど影響が広がっている。
紀伊半島南西部にある関西有数の行楽地・和歌山県白浜町は9日から1週間程度、「白良浜海水浴場」など町内4カ所全ての海水浴場の閉鎖を決めた。10日に予定されていた花火大会の中止も決まった。
海水浴場では9日朝に防潮扉が閉められ、閉鎖を知らせる紙が掲示された。ただ、ビーチに立ち入る人が後を絶たず、町職員らが見合わせを呼びかけた。大江康弘町長は「海水浴場の閉鎖や花火大会の中止は観光への影響が大きく、苦渋の決断だったが安全を最優先に考えた」と説明した。
一方、町内の人気観光施設「アドベンチャーワールド」は通常営業を続ける。担当者は「安心して楽しんでもらえるよう対策を徹底したい」と話した。
「昨夜から電話が相次ぎ、150人ほどのキャンセルが出ている」。高知市の老舗旅館「三翠園」の中沢清一社長は影響の大きさに肩を落とす。市内では9~12日、夏の風物詩・よさこい祭りが開かれる。宿泊施設には最大の書き入れ時だが、周辺のホテルや旅館も予約のキャンセルが相次いでいるという。「地震を心配されるお客様が多く、さらに数は増えるだろう。高知が最も盛り上がる時期だったので、みんながっくりしている」と話した。
南海トラフ巨大地震で最大34メートルの津波が想定される高知県黒潮町の道の駅「なぶら土佐佐賀」には例年、お盆休みに多くの帰省客らが訪れる。担当者は「客足に影響が出るか心配だ。改めて避難時の経路などを従業員で共有したい」と話した。
四国の夏の風物詩「よさこい祭り」(高知市)と「阿波おどり」(徳島市)は、予定通りの開催が決まった。9日夕に前夜祭が始まったよさこい祭りは12日までの日程で、10日と11日に本番を迎える。
祭りを主催する「よさこい祭振興会」は9日午前10時から、県や市など関係者を集めた総務部会を開き、開催の可否を協議。「万全の対策を講じたうえで予定通り開催する」と決めた。競演場や演舞場ごとに避難場所を確保し、観客や出場チームに周知するという。方法は未定だが、本番の未使用の有料観覧席チケットは払い戻しに応じる。
阿波おどりも11~15日の5日間、予定通り実施する。8日夜、実行委員会の公式サイトで「徳島市災害対策連絡本部会議(市長同席)の指示を踏まえ、予定通り開催します」と発表した。地震への備えと津波避難計画の再確認を早急に行うとしている。
関西国際空港では9日、夏休みを海外で過ごす人の出国ラッシュが始まった。グアム島へ出かける兵庫県西宮市の大学生、久保夏奈さん(22)は「地震が起きて少しためらったけれど、春から決めていた旅行。ダイビングやショッピングを楽しもうと思う。日本にいる父親と毎日連絡を取り合う」と話し、航空機に乗り込んだ。
関空を運営する関西エアポートによると、9日の出国者数は3万7800人を見込む。9~18日に国際線を利用する旅客数は66万5300人と予測し、新型コロナウイルス禍前の2019年同期の約9割に達する見通しだ。【大澤孝二、郡悠介、砂押健太、前川雅俊、山本芳博、中村宰和】
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