栃木県栃木市にある建設会社「大伸ワークサポート」は、元受刑者の社会復帰を支援している。ABEMA的ニュースショーでは、廣瀬伸恵社長を密着取材した。
【映像】レディース総長時代の廣瀬社長(当時の写真)
日本の再犯率は48.6%と、2人に1人が刑務所に戻る現実がある。廣瀬氏は「十字架を一生背負って、暗い顔をして笑顔を見せちゃいけないのと疑問に思う。やり直す機会を与えてくれたっていい」と語る。
大伸ワークサポートは、創業13年目の解体・土木工事をメインとする会社だ。社員は20〜60代の約40人いて、そのうちの8割が元受刑者だ。廣瀬氏は7年前、犯罪歴を抱える人を雇用し、社会復帰の支援を行う「協力雇用主」になった。協力雇用主は全国に約2万5000社あるが、実際に元受刑者を雇用しているのは、わずか1024社(2022年度)に過ぎない。
社員たちは、毎日一緒に食事をする。その理由を廣瀬氏は「刑務所でもそうだが、『同じ釜の飯を食う』と仲間意識が強まる」と説明する。食卓を囲む社員たちも、詐欺(20代男性)、薬物(30代男性)、覚醒剤(40代女性)、包丁を振り回した(20代男性)などで逮捕歴がある。
料理の担当は、事務員として働く田中さん(仮名)。かつては銀行員だったが「夜も働く」生活の中で、変化が起きた。「飲み屋よりは風俗派。働いていたお店が、みんな覚醒剤中毒者だった。周りの子が『細いな』と思って、『私も痩せる薬ちょうだい』と始めた」。覚醒剤の使用で38歳の時に2年間服役。結婚して娘もいたが、離ればなれになった。
「『一緒に住めません』と(夫に)追い出された。戻るところがなかったから、知り合いのところを転々としていた。社長に出会えて助かった」(元受刑者の社員・田中さん<仮名>)
なかには「出戻り組」も居る。入社3年目の大石さん(51)は、36歳の時に覚醒剤の使用と売買で逮捕され、刑務所を出たり入ったり。入社後も当て逃げ事故などを起こすなど、更生は一筋縄ではいかなかった。8カ月の実刑判決を受け、出所後に廣瀬氏が再雇用した。大石さんは「もうここの環境しかない。ここから立ち去ったら生きている意味もない」と話す。
廣瀬氏の自宅には、たくさんのプレハブ小屋が並んでいる。そこで4カ月前から暮らす秋山さん(42)は過去5回、刑務所に服役した。「仮釈放中の期間は、ここにいないといけない。窃盗と産業廃棄物処理法違反で、今回は5年。鉄板や銅線を盗んだ」。仮釈放中は目の届くところにいる必要があるため、プレハブ小屋での生活だが、家電はそろっている。「いろんな会社にいたが、ここまで親身になる社長は初めてだ」と語る。
廣瀬氏が元受刑者の社会復帰に取り組む理由には、自身の過去がある。栃木県出身で、18歳の時にレディースの総長になった。覚醒剤の売買で22歳から5年服役し、29歳のとき再び売買で逮捕された。
「全国指名手配になり捕まった時は、妊娠5カ月。30歳で獄中出産して、31歳で出てきた。ホームヘルパー2級の資格を取って働いてみたが、過去がバレやすくて『やめてくれ』と言われてしまった」(廣瀬氏)
そんな時に、知り合いの紹介で出会ったのが、建設業の仕事だ。「社長も『子どものために頑張れよ。もう悪さするなよ』と受け入れてくれた。過去がある私を、偏見の目を持たずに雇い入れてくれた社長に感謝している。基盤があって今につながる」と語った。
とはいえ、協力雇用主として元受刑者と向き合う中には、困難もある。廣瀬氏が見せた防犯カメラの映像では、23時ごろに自宅の壁や玄関などを破壊する、覆面姿の集団が映っていた。「元社員の可能性が高い。ケンカ別れしている人も何人かいる」。取材中にも、無断欠勤した社員が、会社から逃げたと連絡があった。薬物やオレオレ詐欺で逮捕歴のある25歳で、「手分けして探す」という。
ある日の廣瀬氏は、栃木刑務所に居た。女子受刑者を収容する国内最大の施設で、覚醒剤使用で服役する女性受刑者(52)と面接する。女性は刑務所内の求人誌を見て応募した。18歳の子どもが居て、「今度こそ、子どもを大事に、一緒に生活したいと思っている。子どもと一緒に生活できる家族寮はあるか」と問われたという。
「『なぜ繰り返してしまうのか』『今度はなぜやめようと思えるのか』の回答が、自分なりに納得できたときに、雇おうという気持ちになる。採用基準はそこだ」(廣瀬氏)
女性受刑者の増加に向けて、新たな取り組みも始めた。古びたホテルを購入し、来年の春に再オープン予定だという。
「受刑者を受け入れる職種の幅が広がるように。(建設業で女性は)体力的に持たなかったり、性別は男性メインで女性の枠が限られたりする。(このホテルでは)メインは女性元受刑者。一度でも(犯罪に)手を染めた人に冷たすぎる、この社会を変えられたら良い。セカンドチャンスを与えてくれる人が増えることで、再犯率が減るのではないか」(廣瀬氏)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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