松山市の中心街で12日未明に起き、3人が亡くなった土砂崩れの現場について、市が定めた計画では「一定の降雨があった場合は崩壊が起こりやすい」「人命保護の観点から(防災対策に)早期に取りかかる必要がある」と記していた。市への取材で明らかになった。
市は、事前に危険性を認識していたことになる。市の幹部は、土砂崩れの発生直後「予兆は把握できなかった」と説明していた。また、市が計画の通りに早期の対策をしていれば、3人の命が救えた可能性が浮かんだ。
今回の土砂崩れは、松山城が建つ城山(標高131メートル)の北東側のふもとの斜面で起きた。城山はほぼ全域が「松山城跡」として国史跡に指定されている。
このため、文化財保護法による規制の対象で、防災対策のために構造物などを設置する場合、文化庁の許可を得る必要がある。
城山では2010年以降、今回とは別の場所で土砂崩れが3件起きていた。こうした状況を受け、市は文化庁と協議しながら23年10月に「史跡松山城跡樹木管理計画」をまとめた。
この計画では、城山の防災や減災に関する留意点として「土砂災害や倒木が起こった場合、周辺住民に危害が及ぶ可能性が高い」と指摘していた。
さらに「土壌、日照条件ともに状態が悪く、一定以上の降雨があった場合は、斜面崩壊が起こりやすい環境であることが判明している」ことから、早期の対策を求めていた。
市は国の補助金などを活用しながら24~33年度の10年間で計画に従った整備をすることにしている。
一方、今回の現場付近は40~45度の急傾斜地が広がっており、愛媛県の「土砂災害特別警戒区域」と「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されている。
樹木管理計画や城山の危険性について、市の市街地整備課の幹部は毎日新聞の取材に、今回の土砂崩れの前から「認識していた」と話す。その上で「発生場所に関しては崩壊の予兆は確認できなかった」と発生直後と同じ内容の説明を繰り返した。【鶴見泰寿】
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