横浜地検の検事から取り調べ中に「ガキ」「お子ちゃま」などと言われて精神的苦痛を受けたとして、犯人隠避教唆罪で起訴され、有罪が確定した元弁護士の江口大和さん(38)が国に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は18日、取り調べが違法だったとして国に110万円を支払うよう命じた。貝阿弥亮裁判長は「社会通念の範囲を超えて、人格権を侵害した」と認めた。
「供述を得ようとする検事の発言が許されないと判断され、とても良かった」。原告の元弁護士、江口大和さん(38)は東京地裁判決後に東京都内で記者会見し、国の賠償責任を認めた結論を評価した。
訴訟では、国側が取り調べの録音・録画のデータを提出し、法廷で再生された。江口さんの代理人弁護士はデータをインターネットで公開し、注目を集めた。
取り調べの録音・録画(可視化)は、容疑者の自白が自らの意思によるものだったのか判断するための補助的な証拠という位置づけで、2006年から検察で試行的に始まった。
その後、10年の大阪地検特捜部の証拠改ざん事件で検察捜査のあり方が問題視されたこともあり、裁判員裁判の対象事件や検察の独自捜査事件に対象が拡大された。可視化によって威圧的な取り調べや供述の誘導を防ぐ効果も期待されていた。
だが、今回の訴訟では、取り調べが可視化された中でも、一部の検事が事件とは関係のない侮辱的な言動を容疑者に浴びせている実情が明らかにされた。江口さんの代理人の高野傑弁護士は「取り調べの映像が証拠として採用され、事後的な検証ができた」と訴訟の意義を語った。
一方、判決は、江口さんが黙秘の意思を示した後も、56時間にわたって取り調べが続けられたこと自体は違法としなかった。江口さんはこの点を課題に挙げ、「取り調べを長時間受けさせられることのつらさを訴えたい」と語った。
取り調べの録音・録画を義務付ける刑事訴訟法改正の議論にかかわった小坂井久弁護士は「検事の発言が人格権を侵害していることは明らか。判決を機に、黙秘権の保障についても議論を深める必要がある」と話した。【菅野蘭】
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