愛知県犬山市の小学1年、島崎奈桜さん(7)が暴行を受け死亡した事件では、同居していた倉田凱容疑者(32)と、母親の島崎みなみ容疑者(33)による虐待の疑いがあるとして、児童相談所が過去2回、一時保護していたことが判明した。
県一宮児童相談センターなどによると、最初に虐待の可能性を把握したのは2022年12月22日。病院から「複数のあざがある」と児相に通報があった。奈桜さんは約1カ月前にも、自宅で倉田容疑者と入浴中に溺れ、同じ病院に搬送されていた。児相は事件の可能性が高いとして警察や検察に連絡。翌23日から奈桜さんを一時保護し、調査を開始した。
児相の調査に対し、奈桜さんは倉田容疑者に「パンチされた」と説明したが、倉田容疑者はこれを否定。児相は母親が虐待防止プログラムを理解し、母子交流が良好だったことや、両容疑者が一貫して「同居はしていない」と説明したことなどから、23年3月22日に一時保護を解除した。
しかし、約20日後の4月10日、奈桜さんが通っていた保育園の職員が体にあざがあるのを発見。事態を重く見た児相は同日、再び一時保護を開始した。
ただ、2度目の一時保護の際には奈桜さんから暴力に関する証言は出ず、「家に帰りたい」と泣き叫んだことなどから、同6月9日に一時保護を解除。以降、定期的に母子と面会を重ねていた。
奈桜さんは今年4月、市立犬山西小学校に入学。大藪正恭校長によると、欠席もなく元気に登校していたといい、「まじめで学習にも積極的に前向きに取り組み、学級のリーダーとして活躍していた」という。
教員が傷やあざがないかを毎日確認していたが、目立った異常は見られなかった。ただ、亡くなる直前の5月23、24日の登校時には「疲れた」と言いながらしゃがみ込む様子を教員が確認していた。大藪校長は「本人から具体的な訴えはなく、虐待につながる傷は確認していなかった。大変残念でならない」と話した。
5月23日には、児相も母子と面会していたが、手をつないで帰るなど異常は見抜けなかったという。杉本一正・県一宮児相センター長は「ぎりぎりまで調査し、保護したが、それ以上分離を継続するのは難しい状況だった。もっと他の対応があったのかと考えている」と声を落とした。
県は今後、第三者委員会を立ち上げ、児相の対応について検証するとしている。
他の児童らも動揺
奈桜さんと同じクラスだった女児は「明るい子で、お友達だった。また会いたい」。別の児童の保護者は「病気で亡くなったのかと思っていた。事件だったと聞いて驚いている」と話した。【田中理知、荒木映美、加藤沙波、川瀬慎一朗】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。