小林製薬の紅麹(べにこうじ)原料を巡り健康被害の報告が相次いでいる問題を受け、サプリメントの安全性に関心が高まっている。日本では米国などと異なりサプリは原則食品として扱われ、医薬品のような規制がない。多くの企業は独自に厳しい基準を設けて安全性に配慮しているが、個々の企業に安全を依存するのは限界がある。専門家は「サプリに適した規制や管理体制が必要」と指摘している。
政府の令和元年の国民健康・栄養調査によると、サプリのような健康食品を摂取している20歳以上の人の割合は34・4%に上る。しかし、紅麹原料を製造していた小林製薬の大阪工場(大阪市)で床にこぼれた材料を拾って使用するなどの事例があり、安全管理への不安が広がっている。
ただ、サプリ業界全体に問題があるわけではない。味の素では、製造・品質管理に関する指針「GMP(適正製造規範)」などを医薬品に近い基準で順守。製造工程では、X線や金属探知機による異物検査、カメラで色や形の確認、完成品の成分検査など多岐にわたるチェックを実施する。また数年に1度は工場の監査を行い、基準が守られているか抜き打ちで調べているという。同社の岩武宏一郎シニアマネージャーは「起き得る問題を可能な限り想定して網羅的にチェックすることが重要だ」と話す。
アサヒグループホールディングスもGMPや自主点検項目の順守に加え、発売後に顧客情報を継続的に収集し、安全上の懸念がないか常に確認している。
それでも企業によって安全管理体制に差が生まれているのが実情だ。背景にはサプリの品質を保障する制度が日本にないことがある。米国では原材料から最終製品までの同一性確認や品質への配慮を求めるGMPの順守を義務付けている。国によってレベルは異なるものの、中国や韓国でも義務付けられており、日本は立ち遅れている。
唐木英明・東京大名誉教授(薬理学)は「食品とサプリを区別し、外部監査などを含むサプリに適した規制をつくる必要がある」と指摘。その上で「規制でGMPを義務化し、外部の目を入れることで人為的ミスの確率は下がる。今回の件をサプリを含む健康食品全体の安全を考える契機にすべきだ」と強調した。(桑島浩任)
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