「ノーモア・ミナマタ」第2次新潟訴訟の判決を受けた報告会で思いを話す原告団長の皆川栄一さん(中央)=新潟市中央区で2024年4月18日、猪飼健史撮影

 水俣病被害者救済特別措置法(2009年施行)に基づく救済を受けられなかった未認定患者らが起こした訴訟で、新潟地裁判決は昨年9月の大阪地裁、今年3月の熊本地裁に続く3件目の司法判断だった。原告の賠償請求権を認めるかや、国の責任の有無について各地裁の判断は分かれた。

 不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」について、大阪地裁は水俣病と診断された時期を起算点と認定。いずれも20年たっておらず請求権はあるとした。一方で熊本地裁は発症時期を起算点とし、20年が経過して賠償請求権が消滅しているとして原告の請求を退けた。

 これに対し、新潟地裁は「差別・偏見のために賠償請求をちゅうちょするなど権利行使が困難となる事情があった。除斥期間の適用は著しく正義・公平の理念に反する」として、除斥期間の適用そのものを否定した。

 判決後、熊本訴訟の森正直原告団長(73)は「正義・公平に反するとはっきり言ってもらい、熊本の原告は救われた」と話した。

 その一方で、新潟地裁は過去2件と異なり国の責任を否定した。熊本の水俣病については最高裁が04年、国が60年以降に工場排水を規制しなかったことを違法と判断しており、大阪、熊本両地裁も踏襲したが、新潟水俣病はこれまで一度も国の責任が司法の場で認められていない。今回も「原告側が指摘する61年末までに国が有機水銀の排出や住民の健康被害を具体的に予見できたとは言えない」と指摘した。【神崎修一】

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