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 近年、よく耳にするようになってきた言葉「ADHD」。発達障害の1つで、不注意や多動性の特性があり、日常生活でさまざまな困難がある。しかし最近、SNS上では自称する人たちも登場。

【映像】ADHDの特徴

 “自称ADHD”の友人がいるという佐々木さんは「その友人は忘れっぽかったり、空気が読めないところがある。それを注意した時に『ADHDだからしょうがないよね』と言ってきたりする」と話す。ネット上に投稿された特徴や“あるある”といった情報を見て、病院には行かずADHDを自認したという。

 また、カナさんは“自称ADHD”の先輩に悩んでいる。「仕事でミスをした時に、『私ADHDだからできなくても仕方ないじゃん』『じゃああなたがやっておいて』と言ってくる」。この先輩もネットの簡易診断で自己判断したそうだ。「私もしかして…みたいに留めておくのであれば別にいいけど、怒られないための隠れみのとか、障害を免罪符にしないでほしい」と語った。

 しかし、発達障害には診断がつかないグレーゾーンの人も多く、一概に自称は駄目と言い切れない面もある。周りはどう対応すればいいのか、『ABEMA Prime』でADHD当事者、精神科医とともに考えた。

■ADHD当事者の訴え「カミングアウトは慎重にしている」

 発達障害バーを開催しているADHD・ASD当事者のこくりつさんは、「軽い気持ちで自称しないで」と訴える。「18歳の時に診断されたが、それまで健常者と思い込んでいたわけで、生きづらさがずっとある。一種のコンプレックスをそんなに軽々しく語っていいのか?倫理的にどうなのか?という疑問を感じている」と話す。

 こくりつさんはX上で、「発達障害はファッション化されやすいのに、なぜその他の精神障害や知的障害はファッション化されにくいのだろう?」という声をもらったという。「忘れ物があったり、ちょっと空気が読めないというのは、わりと普通の人にもあることだ。ただ、それをコンプレックスだと思っていたらわざわざ言いたくない。特性を嫌だと思うか・思わないかというところが違いだと思う」と指摘。

 「ADHDによくないイメージを持っている人はいるし、普通に受け取ってくれる人もいるが、経験上は前者が多い」ことから、“カミングアウト”には慎重になっているという。その上で、伝え方については「単に『発達障害だ』と言うと、それこそファッションに受け取られたり誤解が広がりやすい。本当に伝える必要があるかを考えて、空間を用意した上で、“何がしんどいか”ということを、その人と人間関係を構築するために伝えるようにしている」と明かした。

 では、周りの人にはどう受け取ってもらえるとうれしいか。「遅刻だったら、電車でどうしても乗り間違えてしまうことがあるので、20分くらいは遅れる前提で考えてもらえるとうれしい」と説明。これにネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏が「僕も遅刻癖がある。“常識が通用しない”という認識で見てもらえるといいのではないか」と話すと、こくりつさんは「そう受け取ってもらえると本当にありがたい」と応じた。

■急増するADHD診断者、グレーゾーンも 周りはどうすれば?

 2010〜2019年度に新たにADHDと診断された人数は約84万人で、20歳以上の年間発生率は21.1倍と急増しているという。精神科医・早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介氏は「認知度が上がり、スクリーニングされやすくなった。親や教師もそういう特性を持つ子がいるということがわかり、受診につながりやすくなったことが大きい」「なかなか治らないうつ病や、パーソナリティ障害と診断されていた人が、発達障害の視点で診断し直した時にそうだったとわかるケースも多い」と説明。

 また、生きるハードル自体が上がってきているとの見方も示す。「精神科の診断は、社会的に障害があるか・ないかというところが最終的なラインだ。現代はマルチタスクや激しい頭脳労働が求められる社会で、ギリギリの人たちが脱落してしまう。そこで苦しくて声をあげている人たちがたくさんいる。子どもの時には診断されなかったけれども、大人になって知ってから生きやすくなったとか、うちの親は発達障害だから家事が苦手だったのかとか、そういうかたちでわかるケースも増えている」。

 「nuts」専属モデルの今井アンジェリカは、自身の周りにも“自称ADHD”の人が溢れていると話す。「ギャルも大体忘れっぽかったりするので、“うちはADHDだから”と言う。ただ、ADHDが発達障害だということは知らない子も多くて。周りの子たちも、そういう言葉を、障害とは受け止めずに右から左へ受け流している」。そうした言葉はやはりSNSをきっかけに知るそうだ。

 一方、パックンは「“○○ができない”だけではなく、ADHDであろう過去に大活躍した人物を受けて、カミングアウトしている有名人もいる。“偉大な成績を残す力の源”というイメージも出回っていて、言って損はないと思う。実はお笑い芸人にもすごく多い。アメリカのコメディアンや役者だと、自虐ネタ込みの面白い人物のキャラ作りにも役立つ。本当の方も、ファッションの方もいると思うが、流行っているのは間違いない」とした。

 益田氏は“ファッション化”の懸念として、「“私も発達障害かも”という不安につけ込むビジネスがある。“自分もそうなんだよ”と言って詐欺をする、医師の診断を受けていないのにサプリを売る。アメリカなどではインフルエンサーを使って宣伝する人たちも出てきていて、そういうブームはよくない」と指摘。

 一方、グラデーションがあるのも事実で、「1割弱くらいの人は認知の質に違いがあり、個性的であるがゆえに、社会的に苦しんでいる。彼らに積極的に薬物治療をしたほうがいいのか、手帳を渡したほうがいいのか、ラベリングしたほうがいいのかなど、すごく悩みながら臨床している。一人ひとりの患者さんに対して、ドクターが困りごとを解決している段階だ」とした。

 では、「ADHDだ」と言われた時、周りの人はどう向き合えばいいのか。株式会社Kaienの鈴木慶太代表は、「発達障害です」と伝えても何も伝わらないため、「自分はこういう時にミスをしやすいです」「こういうことが苦手です」「こういう配慮をしてもらえるとうまくいくと思います」など素直に伝え、話し合える環境をつくることが大切だとしている。

 益田氏は「友達に『彼女と別れるんだよね』『離婚するかもしれない』と言われた時の相談と似ている」とし、「それに僕らは『またまた』『大丈夫だって』と言って、後日実際に別れてしまうケースがある。つまり、思ったよりも深刻なわけだ。僕も診察室で話していて、“患者さんが家に帰った時はもっと苦しいだろう”と、少し重めに判断したりする。周りの人は、直感的に受ける反応よりも少し重めに捉えたほうがバランスが取れると思う」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)

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