保存修理工事をほぼ終え、国重要文化財の道後温泉本館(松山市)が11日、約5年半ぶりに全館での営業再開を迎える。10日の記念式典で野志克仁・松山市長は「100年に一度の大修理を終え、いよいよ待ちに待った再開。良いおもてなしを積み重ねていけばこの地域はさらに100年輝き続けられる」と述べ、期待を込めた。
道後温泉本館は、1894(明治27)年に老朽化した湯屋を改築した現在の神の湯本館などからなる。皇室専用浴室の又新殿(ゆうしんでん)も有する。2019年1月から部分営業をしながら耐震補強や配管の更新などを進めてきた。
二つの貸し切り休憩室新設
新たな目玉は、新設される二つの貸し切り休憩室「しらさぎの間」(19畳)と「飛翔(ひしょう)の間」(12・5畳)だ。管理する松山市はインバウンド(訪日外国人)や団体客の利用増に期待を寄せる。他にも、館内に冷暖房を完備。脱衣室には洗面台を新設し、シャンプー類を浴室に備えるなど文化財としての価値を保ちつつ、客の利便性を高めた。
5年半ぶりに利用が再開されるものも多い。工事期間中は入り口が北または東側に設けられていたが、西側の玄関棟に戻ってきた。また、浴室は神の湯と霊(たま)の湯を交互に開放し部分営業を続けてきたが、両方を一度に楽しめるようになった。休憩室の利用や夏目漱石が過ごしたとされる「坊っちゃんの間」の見学も再開される。
料金1.5倍の値上げ
一方で再開と同時に料金が値上げされる。昨今の物価高騰などから「持続可能な経営のため」(松山市の担当者)、1・5倍程度値上げをする。例えば、「神の湯入浴のみ」で大人460円から700円に引き上げられる。
担当者は「皆さんが楽しみに待っていた日。サービスを充実させてお迎えしますのでぜひ道後温泉本館に足を運んでほしい」と呼びかけた。【山中宏之】
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