17日間の選挙戦で9日しか街頭演説に立たなかった小池知事。それでも圧勝となりました。なぜ選挙に強いのか、17日間の選挙戦からその秘密を探りました。

■“自民と協力”実態は? 非公開会合の映像入手

選挙戦初日、候補者たちが街頭で支持を訴えていた頃、小池知事は公務として大手町の森を視察していました。
(小池百合子氏)「夕方など時間がある時に選挙戦を行っていく。二刀流・ハイブリッドで行きたい」
“公務優先”。それが17日間の選挙戦の戦い方。2期8年。現職の余裕でしょうか?4人の立候補者による討論会では…
(蓮舫氏)「まさか外苑の再開発の事業者から都知事はパーティーのチケットの購入とか受けていませんよね?」
(小池百合子氏)「パーティーの開催につきましてはそれぞれ法律にのっとった形で公表をさせていただいているところでございます」
(石丸伸二氏)「今の蓮舫さんの質問はイエスかノーかで答えられるのでイエスかノーかで答えていただきたいと、おそらく視聴者全員思ったと思います。もう一度お願いします」
(小池百合子氏)「私はこれまで政治のパーティーという形で開かせていただいております」
正面から質問に答えず、慎重な言い回しでいなす小池知事。
(田母神俊雄氏)「事務所を私が築地に構えたら小池知事の悪口を言う人が多いです、すごく。(移転が)1年遅れたということで」
(小池百合子氏)「ちょっとお友達選んだ方がいいと思いますけれども」

動画のタイトルは「小池ゆりこ都知事アラビア語本当に喋れる!?」。
(小池百合子氏)「お宝映像じゃないですか」
学歴詐称疑惑に対する反論の意味合いもありそうです。さらに…
(AIゆりこ)「私の知事就任後、2017年6月に東京都公立学校教員勤務実態調査を初めて行い…」
小池知事の発案で、知事としての実績を“AIゆりこ”が伝える動画も配信。街頭に立つよりも公務を優先させる小池知事が力を入れていたのが、SNSを使った積極的な情報発信です。こうした知事の戦い方に他陣営からは…
(立憲民主党 辻元清美 代表代行)「堂々と街頭に立つべきだと思いませんか。そしてぜひやってほしいのは、自民党の萩生田東京都連会長と二人三脚でやっているんですよ、今選挙。裏金王の萩生田さんと」
しかし選挙戦中盤を過ぎてもスタイルを変えません。公務で都内の幼稚園を視察した時のこと…
(園児)「好きな色を教えてください」
(小池百合子氏)「好きな色ね、みんな真っ赤だね。好きな色はね、ここだけの話だけどね、緑」
また、選挙戦期間中こんな場面もありました。公務で奥多摩町のダムを視察。それからおよそ1時間後…街頭演説ではいつもの勝負服に。
Q.公務に名を借りて選挙活動をしているのではないかという指摘も聞かれるが?
(小池百合子氏)「視察に行くことについて何ら問題もないと思っております。むしろもっともっと見ていくところはあるかと思っております」
公務を優先させた選挙戦。各種情勢調査では序盤から終盤まで一貫して「優勢」や「リード」が伝えられました。

その裏では、選挙戦の前から小池知事による“組織固め”が始まっていました。告示日前日に訪れたのは立憲民主党の最大の支持母体、連合の東京支部です。
(連合東京 斉藤千秋会長)「連合発足以来、こんなに知事と連合東京が距離を詰めて政策実現を一緒に話し合える関係を作れているのは今しかない」
(連合東京関係者)「連合東京は小池さんのポスター貼りを半分ほど手伝った。連合の中には、小池さんも嫌だけど、蓮舫さんに入れるよりましだという人もいる」
さらに、選挙戦3日目に開かれた公明党の支持母体・創価学会の集会で配布された文書には…
(創価学会の集会で配布された文書)「公明党の提案と小池都知事の決断により、子育てや高齢者の支援策などが次々と実現してきました。共産党が全面支援する人物が都知事になれば、これまでの改革が後退し、都政は混乱します」
これに呼応するように街頭演説では…
(小池百合子氏)「第2子の保育料無償化ということで、都議会でも公明党の皆さんからも提案があった。そういう中で今度はさらに進めて第1子から保育料を無償化するように拡大をして参りたいと思いますが皆さんいかがでしょうか?」

さらに選挙戦13日目、番組のカメラは“水面下での動き”を捉えていました。小池知事が訪れたのは、都庁の目の前のホテル。メディアを完全にシャットアウトした非公開会合。独自に入手した映像に写っていたのは、自民党を支援する約300の各種業界団体の人々です。
(小池百合子氏)「先行しているとかリードしているとか、あれは陰謀です。どうぞ皆さんここで締めないと、私、小池百合子3期目ができません。これからパリで日本の選手、金メダルを目指します。この都知事選挙は金メダルしかありません。どうぞ皆さん、皆さんのスマホいっぱいお友達、業界の仲間入っていますよね、“あいうえお”順で、費用は皆さんにもっていただいて。あいうえお順に上からどんどんどんどんかけていただきたいんです。あと5日です、5日しかありません。どうぞ皆さん今日は、“あ”行から“さ”行、次は“な”行から次というふうにお友達電話してください。小池金メダル。一票入れてねということをお願いしていただきたい」
(会合の参加者)「我々聞いていても、さすがだなと。まあはっきり言って、(蓮舫さんと)どっちにしようかなと思ったけど、でもやっぱり小池さん」
(東京都私立中高父母の会 中央連合会)「1000人以上いらっしゃったと思います。僕らも立ち見でした」
(東京都宅建協会)「宅建業者は多分ほとんどは小池さんで行くんじゃないかと思いますけどね」
自民党を支援する「各種団体の総決起大会」ですが、会場に、自民党議員の姿はなく、のぼりやビラにも自民党の文字はありませんでした。

■自民に“ステルス” 要求か 都連幹部「厚かましい」

実は、この会合の4日前、自民党都連の深谷隆司最高顧問が都連の担当者に問い合わせていました。
(自民党都連 深谷隆司 最高顧問)「小池のためにさ、各種団体が会合を開くだろ?ホテルで」
(都連担当者)「はい、はい」
(自民党都連 深谷隆司 最高顧問)「我が党から誰か代表して演説やるとか出席するようになっているの?」
(都連担当者)「議員はちょっと遠慮してほしいという話です」
(自民党都連 深谷隆司 最高顧問)「小池の方から各種団体に議員が出るのを遠慮してくれって言っているの?」
(都連担当者)「ええ」
(自民党都連 深谷隆司 最高顧問)「厚かましい野郎だな、あいつ。分かりました。はい、分かりました」
「裏金問題やなんかで叩かれている自民党と同じ土俵に乗りたくない。けれど選挙は応援してもらいたい。僕から言わせれば随分好きなこと言ってるなって感じがするよね」

これは、告示日前日に都議会自民党が出したとされる小池知事との選挙協力についての文書。出陣式・第一声については赤字で「議員の参加・動員はございません」。各種団体総決起大会についても赤字で「議員は参加無し」。自民党議員は表に立たず“ステルス支援”に徹する方針が記されていました。
(自民党都連 深谷隆司 最高顧問)「今はね、実際問題、小池さんと蓮舫さんの戦いでしょ?要するに我々にとっては共産党っていうのは政敵だから。そこと手を結んだ蓮舫さんは政敵になるわけだ。そうすると、対抗して出ている小池さんをもっとしっかり勝たせなきゃなという感じになってくるね」

安倍元総理が“ジョーカー”に例えた小池氏の政治手腕
小池氏が政治の世界に飛び込んだのは今から32年前。
(日本新党 小池百合子 参院議員(当時40歳))「永田町は、今日はサファリっぽいんですけれども、猛獣とか珍獣とかいらっしゃると聞いたので、タヌキもいるって話も聞いております」
新党ブームの風に乗って日本新党から出馬した小池氏。その後、新進党や自由党、保守党を渡り歩き、自民党に入党します。小泉総理大臣に重用され、2003年、環境大臣として初入閣。
(小池百合子環境大臣(当時))「『クールビズ』という名称にさせていただきました」
その後、女性で初めて総裁選にも挑戦します。
(自民党 小池百合子 衆院議員(当時))「まず私自身が総裁選に立候補できたこと、これもすごい。これはまずすごいことであり、まさに自民党が自民党を超える日、その一瞬に少しでもお役にたてたかと」
そして2016年、都知事選に出馬を表明。都議会自民党の体質を批判し、女性初の都知事となりました。
その後、いわゆる「モリカケ問題」で安倍政権の支持率が急落すると…
(小池百合子代表(当時))「希望の党代表、小池百合子でございます」
新党を結成して政権奪取も狙いました。
安倍元総理は回顧録の中で、小池氏をこう評しています。
(「安倍晋三 回顧録」から)「小池さんは、常にジョーカーです。手札の1から13の中にはないのです。相手に勢いがあるときは、近づいてくるのです。しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです。『あれ、わき腹が痛いな』とこっちが思った時には、もう遅い」
自民都連の深谷最高顧問によれば、今回、小池知事の方から支援を求めてきたといいます。
(自民党都連 深谷隆司 最高顧問)「小池さんが萩生田くんに応援を頼んだ、その2人で会ったという報告はありました。要するに協力を求めてきた。だから出来るだけのことはしましょうかということ」

■都議選では微妙な関係 自民の対立候補を応援

選挙戦最終日、自民党都連・萩生田会長の姿は地元・八王子にありました。
(自民党都連 萩生田光一会長)「逆風の中での選挙となってしまいました。逆風の原因を作った1人として、改めて市民の皆さんにご心配おかけしたこと、お詫びを申し上げたいと思います」
実は、都知事選と同じ投開票日で都議の補欠選挙も行われています。
Q.今回の補選が国政に与える影響はどのように?
(自民党 石破茂元幹事長)「当然ある。だから一生懸命。そういうことです」
自民党は9選挙区のうち8選挙区に候補を擁立。しかし3選挙区で小池知事が特別顧問を務める「都民ファーストの会」の候補と対決しています。そのうちの1つ、中野区では、小池知事の秘書・荒木千陽(ちはる)さんが立候補しています。対する自民党の出井良輔さんは都知事選では小池知事を支援しますが、都議補選では小池知事の側近と対決を余儀なくされています。
(自民党 出井良輔候補)「私から見ると、あっ、いつの間にそうなっちゃったのかなっていうのが本当のところだと思います」
Q.(小池さんの)応援には前向きか?
「いやいや、応援はしますよ。応援しないという選択肢は僕にはないので。応援したいかしたくないかというと微妙なところがありますよね」
小池知事との間でどのような話し合いがあったのか?萩生田都連会長に聞きました。
Q.具体的にどういった支援を?
(自民党都連 萩生田光一会長)「それぞれの立場で皆さん応援してくれていると思いますよ。本人たちの戦い方があるので、言われた通りのことやっているだけです」
Q.場所によっては都民ファ候補と対立するが?
(…スタッフと立ち去る)

都議補選での必勝を掲げる深谷最高顧問。自民と都民ファの候補が対決している選挙区に小池知事が応援に入る可能性を尋ねると…
(自民党都連 深谷隆司 最高顧問)「小池さんがもし、普通の人間的な判断をお持ちであれば、そんなことはできないでしょう。都知事選挙でお手伝いするんだから、こっちはね」
しかし…
(小池百合子氏)「小池百合子、小池百合子でございます」
最終日、自民と対決する都民ファ候補の事務所前に現れました。
(小池百合子氏)「荒木千陽、荒木千陽候補ともにがんばって参りましょう」
自民党の出井候補は小池知事が応援に入らないという事前の約束があったはずだと思っています。
(自民党 出井良輔候補)「そういうのは本当にね、どうなんでしょうね。私たちは政治家ですから、色んな方と約束ごとで物事進んでいますのでね。そういう法律で規定されていないことであれば何やったっていいじゃないか、というようなことはちょっとどうかなと思いますけどね」

6日夕方、突然の雷雨に襲われた東京。小池知事は最後の街頭演説の開始を30分ほど遅らせました。
(小池百合子氏)「今も私は都庁の危機管理監と防災部に、この雨が洪水にならないようにしっかりと見張りながら対応するようにと。危機管理、首都防衛を私、小池百合子にお託しをいただきたい」
選挙戦最終日も「公務優先」で締めくくりました。

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