詐欺被害に遭った人が弁護士に着手金を支払って救済を求めようとしたら、その弁護士が偽者で再びだまされる被害が相次いでいます。その巧妙な手口を取材しました。
■詐欺被害者を狙う“着手金”ビジネス
元衆議院議員 今野智博被告(48) この記事の写真 元衆議院議員 今野智博被告(48)2016年衆院内閣委での発言
「新たな詐欺の形態が次々と現れてきているというのが、現状ではないか」
元自民党・安倍派の衆議院議員で弁護士の今野被告は先月、詐欺被害金の回収をうたって不正に着手金を受け取ったとして逮捕され、今月2日に起訴されました。
今野法律事務所のホームページでは「詐欺被害の返金は弁護士にお任せください」とうたっていましたが、実際には弁護士資格のない人物が被害相談に乗り、着手金を受け取っていたとみられています。
“詐欺被害者を狙った着手金ビジネス” 大地総合法律事務所佐久間大地弁護士
「最近は“詐欺被害者を狙った着手金ビジネス”みたいな手口が非常にはやってます」
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■LINEで交わされた着手金のやりとり■LINEで交わされた着手金のやりとり
LINEで交わされた着手金のやりとり番組は、実際に今野法律事務所に法律相談をしたAさん(20代)に話を聞きました。Aさんは投資詐欺で200万円の被害に遭い、去年10月に助けを求めました。
Aさん「電話したら今野さんではなく、他の方が出て。絶対にお金返ってくるよみたいな感じで最初は言ってきました」
わらにもすがる思いで相談したAさん。着手金についてのやりとりが残っていました。
わらにもすがる思いで相談も 今野法律事務所「着手金の残りの部分を、和解金からという事でしょうか? いくらかでもご入金いただかないと困ります」 男性
「3万円なら振り込めます」 今野法律事務所
「残りの17万円に関しては、1月にお支払いいただくという事でよろしいでしょうか」 着手金とは
着手金とは、弁護士に依頼をした段階で発生し、成功・不成功にかかわらず支払います。Aさんが着手金28万円を支払うと、スタッフの対応は冷たくなったといいます。
Aさん「契約してから、すごい言い方が変わったというか『(被害金が)返ってこないのはしょうがないじゃないですか。あなたがお金を渡してしまったのがいけないんですよね』と言われて」
今野弁護士が逮捕されてから、事務所側と連絡がとれない状態が続いています。
Aさん「本当に言葉が見つからない。言葉が出ないぐらい、だいぶショックですね」
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■“巧妙な手口”検索上位狙い…■“巧妙な手口”検索上位狙い…
大手弁護士事務所を騙るインターネット上では、被害回復の実績をうたう広告が横行しています。なかには、大手の弁護士事務所をかたる偽サイトまでありました。
森・濱田松本法律事務所のコメント「詐欺被害の救済をうたい、更に金銭を詐取しようとする悪質な偽サイトであり、事務所名を悪用されることは極めて遺憾です。今後、厳正に対処していきたいと考えております」 検索上位狙い
不正に着手金を受け取っていた犯行グループを知る人物は次のように話します。
犯行グループを知る人物「集めた着手金は広告費として広告会社に支払われ、広告会社から歩合制でスタッフに支払われていた」
キーワード検索で引っ掛かりやすいよう上位に来るようにしていたといいます。
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■違和感も…元国会議員の肩書き信じて契約■違和感も…元国会議員の肩書き信じて契約
元国会議員への信頼感もBさん(60代)は投資詐欺の450万円の被害を取り戻そうと去年12月、今野法律事務所と契約しました。佐久間弁護士によると、着手金48万円・成功報酬2.8%で、成功報酬が極めて低い代わりに、着手金が高くなっています。
Bさん「『着手金を下げて、成功報酬を上げてくれ』と言ったんですけれども、『今野の方針で被害額が大きい人から成功報酬は低く抑えている』と」
「別の法律事務所は、内容証明を送るのにいくらかかるとか、そういった費用もなくて、着手金のみでということで。今野先生いますかと電話すると、『法廷に行っております』と返事」
契約の内容やスタッフの対応に違和感を覚えつつも、“元国会議員”の肩書から契約を交わしました。
Bさん「国政に携わった弁護士が着手金詐欺をやるとは思わない。これを信じられないなら、何を信じたらいいんだという感じ」
■「慎重に弁護士を見極めることが必要」
相談急増今野被告らが詐欺の被害者900人から不正に受け取ったとされる着手金は、5億円に上るとみられます。
東京都消費生活総合センターによると、「詐欺被害で弁護士に相談したが、高額の着手金を払ったのみで対応してもらえない」といった相談が急増しています。
佐久間弁護士は「詐欺被害の回復は難しく、慎重に弁護士を見極めることが必要だ」と話します。
佐久間弁護士 佐久間弁護士「『詐欺被害回復は非常に返金が難しい」と説明をしているんです。きちんとした弁護士は、まずリスクを伝えます。回収されないリスクは、もちろん伝えますし、こういう動きになったら回収できる可能性が出てくるだとか、場合分けをして説明ができると思います」 「大丈夫っていう言葉を安易に使うような事務所は、間違いなく詐欺被害の回復の実態を分かっていないので、依頼しない方がいいと思います」
(「グッド!モーニング」2024年7月4日放送分より)
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