旧優生保護法のもと、不妊手術を強制された人たちが国に賠償を求めていた裁判で、最高裁は3日、憲法違反だとして、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。
飯塚淳子さん(仮名・70代)
「よかったなと、ジーンときました、泣きました。人生は返ってこないんですけど、いい判決でよかったと思っています」
飯塚淳子さんは、全国に先駆け、25年以上にわたり、旧優生保護法をめぐる国の責任を追及してきました。
戦後まもなく、1948年に制定された旧優生保護法。「不良な子孫の出生を防止」することを目的に掲げ、障害のある人などに強制的に不妊手術を行うことを認めてきました。
不妊手術の強制は、国策として進められました。手術を受けたのは、少なくとも2万5000人に上るとされ、“戦後最大の人権侵害”ともいわれています。
飯塚さんが、軽度の知的障害があるとして、不妊手術を強制されたのは16歳のとき。後日、両親の会話から自分の体に何をされたのか知りました。しかし、それから30年以上経って、障害はないと診断されたといいます。
飯塚淳子さん(去年6月)
「理解してくれる人ばかりではないので、声を上げるまで勇気がいりました。当時は、弁護士さんに優生保護の話をしたときに、最初、わからなかったみたい」
飯塚さんが上げた声は、各地の被害者が裁判を起こす動きにつながります。
2022年から去年にかけ、札幌、東京、大阪の高裁では、旧優生保護法を憲法違反と判断し、国に賠償を命じました。しかし、飯塚さんらが訴えた仙台高裁では、憲法違反と認めたものの、国の賠償責任は認めませんでした。
立ちはだかったのは“時の壁”でした。
損害賠償を請求できる権利は、20年で一律に消滅するとした“除斥期間”。飯塚さんには、今さら賠償を求める権利がないとされたのです。
飯塚さんは、これを不服として上告。
国側も各地の判決を受け上告し、3日の判決を迎えます。
最高裁に向かう道中で話を聞きました。
飯塚淳子さん(仮名・70代)
「私らの人生を奪っておいて、何が20年の除斥期間だなんだって。何を言っているんだって感じ」
15人の裁判官全員からなる最高裁大法廷。
戸倉三郎裁判長
「個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反する。訴えが除斥期間の経過後に提起されたことをもって、
国が賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底、容認することができない」
国の賠償責任を全面的に認めました。
訴えを起こした原告。
鈴木由美さん(60代)
「本当に、きょうは、よかったね。この判決を第一歩に、私たちが当たり前に、同じような世界を一歩ずつ、同じような人たちと一緒に、弁護団の方と一緒に歩んでいきたいと思います」
小林寶二さん(90代)
「きょうの裁判、たくさんの方が集まってくれました。歴史的な判断をされたと思います」
賠償額の検討のため審理が差し戻され、まだ裁判は続きますが、飯塚さんは、こう呼びかけました
飯塚淳子さん(仮名・70代)
「障害者差別のない社会であってほしい。皆さんに、ぜひ名乗り出ていただいて、謝罪と補償を受けてほしい」
政府は、判決に基づき速やかに賠償すると表明しました。
岸田総理
「真摯に反省し、心から深く深くおわびを申し上げる次第です。まずは、最高裁判所で、本日確定した判決に基づく賠償を速やかに行います。国会とも相談しながら、新たな補償のあり方について、可能な限り、早急に結論を得られるよう、加藤こども政策担当大臣、小泉法務大臣に対して検討の指示を依頼しました」
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