年金を将来どれだけ受け取ることができるのか、最新の試算が明らかになりました。
■『年金』いくら受け取れる?
厚生労働省が5年に1度、将来の公的年金の給付水準を試算する『財政検証』。今回は、経済成長率が異なる4つのケースに分けて行われました。
そのうち、経済や労働人口が伸びると仮定した3つのケースで、年金の給付額の目安は、現役世代の平均的な手取り収入の50%を維持できると示されました。
林芳正官房長官
「過去30年間の低成長の状況が続くとの前提をおいたケースにおいても、所得代替率(現役世代の手取りに対する割合)50%を確保できる。今後100年間の公的年金制度の持続可能性が確保されている」
■モデル世帯で試算 年金どうなる?
3日に公表されたのが、年金制度の5年に1度の“定期健診”と言われる財政検証です。対象は、国内に住む20歳以上60歳未満の人が加入する『国民年金』、それに加え会社員・公務員などが加入する『厚生年金』、この2階建ての『公的年金』についてです。
評価のポイントは『所得代替率』。これは年金を受け取り始める65歳時点での年金額が、現役世代の男性の平均手取り収入額と比べて、どれくらいの割合なるかというものです。
今年度はモデル世帯で61.2%。所得代替率は50%を下回らないよう法律で定められています。
検証では、給付水準を経済成長が異なる4つのケースで試算しています。
(1)実質経済成長率が1.6%の場合(2039年度)
現役世代男性平均年収:45万5000円
モデル世帯の年金額:25万9000円
所得代替率:56.9%
(2)実質経済成長率が1.1%の場合(2037年度)
現役世代男性平均年収:41万6000円
モデル世帯の年金額:24万円
所得代替率:57.6%
(3)実質経済成長率が−0.1%の場合(2057年度)
現役世代男性平均年収:41万8000円
モデル世帯の年金額:21万1000円
所得代替率:50.4%
(4)実質経済成長率が−0.7%の場合(2059年度)
現役世代男性平均年収:38万2000円
モデル世帯の年金額:19万1000円
所得代替率:50.1% その後37%〜33%程度
4つのうち、3つで50%が維持されると試算されました。
ただ、前回5年前の検証では経済がある程度成長しても、所得代替率が50%を切るケースがあるという試算もありました。
今回の検証について、年金制度に詳しい大和総研・シニアエコノミストの末吉孝行さんに聞きます。
(Q.5年前の検証と比べて率が上がった理由は何ですか)
末吉孝行さん
「デフレからもほぼ脱却し、女性や高齢者の就業者数の増加などで厚生年金の被保険者も増え、株高で積立金も増えたため」
(Q.実際にはどのくらい給付されますか)
65歳になった時、どれくらいもらえるかを年齢別に見てみます。
実質経済成長率が−0.1%の場合(2034年度以降30年平均)
50歳:男性14万1000円/女性9万8000円
40歳:男性14万1000円/女性9万9000円
30歳:男性14万7000円/女性10万7000円
20歳:男性15万5000円/女性11万6000円
若いほど給付金が高い理由は、実質賃金の上昇と、労働環境が変化するなどして厚生年金の加入期間が伸びるためだということです。
(Q.本当に政府の試算通りもらえますか)
末吉孝行さん
「高い確率で試算のような額をもらえると思う。ただ、リーマンショックのような急激な景気悪化や株価急落、デフレへの逆戻りなど“不安要素”が全くないわけではない」
(Q.年金制度改革では「納付期間を延ばす案」もありましたね)
厚生労働省は、少子高齢化による給付水準の低下を防ぐため、保険料の納付期間を現在の40年から45年に延長する案を検討していました。
今回、『納付期間5年延長』も試算されましたが、見通しが改善したため、次の年金制度改革では『納付期間5年延長案』を撤回するとしています。
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