復活した銘菓「せめんだる」=山口県山陽小野田市で2024年4月2日午前8時37分、近藤聡司撮影

 山口県山陽小野田市の銘菓「せめんだる」が2年ぶりに復活する。70年販売を続けた老舗の和菓子店が新型コロナウイルス禍で倒産し、姿を消していた。復活を望む声を受け、同市厚狭の食パン専門店「極みの食パン安都佐(あずさ)」が取り組んだ。新たな「せめんだる」を完成させ、19日から販売する。

 せめんだるは、樽(たる)の形をした黒あんの最中(もなか)。セメント産業で栄えた小野田地区では、かつて袋ではなく木の樽にセメントを詰めて出荷していたといい、これを模して同市セメント町の和菓子店が1952年に発売した。地元の歴史に根ざし、手土産に重宝される菓子として定着。だがコロナ禍以降、店のかき入れ時の盆や正月の需要が激減したことも響いて、製造元は2022年5月に倒産した。

 70年も親しんだ銘菓が消え、多くの市民が惜しんだ。その声に押され、安都佐を運営する同市の社会福祉法人「健仁会」が銘菓の復活に着手。店のスタッフは、専門の食パン以外の商品開発に一から取り組んだ。

「せめんだる」のあんを練る安都佐のスタッフ=山口県山陽小野田市で2024年4月15日午前10時24分、近藤聡司撮影

 小野田商工会議所は「せめんだる」の商標を取得し、復活を地元業者に促した。その呼び掛けに応える形で、安都佐が製造することになった。

 あんづくりでは、倒産した和菓子店のレシピが残っておらず、専門家を頼った。「あんこの神様」と呼ばれ全国の店を指導する小幡寿康さんの教えを仰ぎ、作り方を学んだ。開発リーダーの越智和恵さん(47)は「豆の形がしっかり残り、上品な味のあんが完成した。自信になり、復活させられると思った」と振り返る。

 最中の皮でも、和菓子店と同じ皮を調達するために苦労した。和菓子店は皮の製造を福岡県の業者に外注していたが、業者は既に皮を焼く鋳物を破棄していた。鋳物を製造した名古屋市の業者に尋ねると、せっこうの型が残っており、元の鋳物を作ってもらえた。こうして同じ皮を外注できるようになった。

 安都佐では19日からのせめんだるの販売に合わせ、開店を午前11時から午前10時に早める。店舗は新幹線のJR厚狭駅にも近く、越智さんは「手土産にするお客さんに都合が良いだろうと1時間早めた。毎日少量を丁寧に作るやり方で、末長く続けられるとうれしい」と話す。

 せめんだるは、午後3時の閉店後にスタッフが翌日販売する分を手作りし、食パンと同じく無添加で提供する。1箱10個入りで1350円。問い合わせは同店(0836・73・0118)。【近藤聡司】

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