旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制された被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は3日、旧法の規定を憲法違反と判断し、国の賠償責任を認めた。不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」については、旧法の被害者には適用しないとする初の統一判断を示した。
被害から20年以上が経過
後続訴訟は大法廷判決の枠組みに従って審理されるため、裁判を起こした旧法の被害者は全面救済される。最高裁の法令違憲判断は戦後13例目で、裁判官15人全員一致の意見。大法廷は「除斥期間の経過で国が賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反する」と述べた。
被害者が手術を受けたのは50~70年代ごろで、提訴まで20年以上が経過していた。国は訴訟で、除斥期間が適用されるべきだと主張していた。
大法廷は、旧法の規定は立法時点で個人の尊厳を定めた憲法13条と法の下の平等を定めた14条に反しており、国会の立法行為は違法だったとした。
判断のポイント
その上で、国が除斥期間を主張できるかを検討。国が旧法の違憲の規定によって約48年間にわたり、被害者を差別し犠牲を強いて、約2万5000人が生殖能力を失うという重大な被害を与えたと指摘した。
さらに、旧法が96年に母体保護法に改正された後、速やかに被害補償の措置を講じることが期待されていたのに、国は不妊手術は適法という立場を取り続け、救済策も一時金320万円の支給にとどまったと批判。89年の除斥期間の最高裁判例を変更して、国が除斥期間が過ぎたと主張することは信義則に反し、権利の乱用で許されないとし、被害者の賠償請求権は消滅していないと結論付けた。
大法廷は上告審で審理されていた札幌、仙台、東京、大阪(2件)の訴訟のうち、国の責任を認めなかった仙台高裁判決については、賠償額算定のため審理を差し戻した。被害者1人当たり1100万~1650万円(配偶者は220万円)の支払いを国に命じた残り4件の高裁判決は確定した。
国は2019年、被害者に一時金320万円を支給する救済法を施行したが、訴訟で認められた賠償額は一時金を大幅に上回っており、国は救済法の見直しを迫られる。【巽賢司】
旧優生保護法訴訟最高裁判決 骨子
・旧法の規定は立法時から個人の尊厳を保障する憲法13条と平等原則を定めた14条に違反していた
・旧法の規定が国民の憲法上の権利を侵害していたことは明白で、国会の立法行為は違法
・除斥期間の経過で国が賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反する
・国が除斥期間の主張をすることは権利の乱用。国は賠償責任を負う
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