戸畑祇園大山笠の競演会で、見物客を魅了する提灯山笠=北九州市戸畑区で2023年7月22日午後8時50分、上入来尚撮影

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産「戸畑祇園大山笠」の四つの大山笠のうち、天籟寺(てんらいじ)大山笠は、祭りのクライマックスを飾る27日の競演会への不参加を決めた。競演会を主催する振興会役員に大山笠の関係者がいないことへの抗議が理由だという。しかし、現在の体制は過去の暴力団関連の不祥事を受けたもので、振興会側は「時期尚早」として受け入れない方針だ。

 競演会は例年、四つの山が、大山と中学生が担ぐ小若山笠が街中を練り歩く運行が特徴で、大小計8基の「光のピラミッド」が見物客を楽しませる。現在、振興会は麻生渡元福岡県知事を会長に、行政や地元関係者、企業などで組織し、各大山が協力する体制を取っている。

 現在の体制になったのは2018年。前年に振興会内の組織で、大山笠の総代表らで作る運営委員会の元委員長と暴力団関係者の関係が問題となり、各大山笠の総代表4人を含む6人が暴力団の宴席に出席していたことが発覚した。これを受け、全ての大山笠関係者が役員を辞任した。以後、振興会に大山笠関係者が直接関わらない仕組みに変わった。

 天籟寺側は23年5月以降、大山笠関係者が運営から外れたことで安全な山笠運行が出来なくなったと主張。大山笠関係者の役員への復帰を要望してきた。

 振興会側は24年4月9日の意見交換会で、麻生会長が文書で「新体制への移行から5年しかたっておらず、いまだ市民や企業から反社会的勢力との関わりについて意見をもらうなど信頼回復には至っていない」との見解を示すなど、復帰には否定的な立場だ。

 6月30日に記者会見した藤本和己総代表は暴力団との関係は「当然ない」と否定したうえで「(競演会は)山を担う人間がやるべきだ。自分たちの祭りは自分たちでやっていくべきだ」と主張。会見の出席者からは「どのレベルになったら復帰できるのか」との声も漏れた。

 振興会事務局によると、役員への復帰について2山は否定的で、1山は賛同しているという。実務者の話し合いの場を設けるなど、安全運行は現体制でも対応は可能という。担当者は「未来永劫(えいごう)、戻さないわけではない。時期尚早との意見がある中で、まずは4山で同じ考えのもとで協調してほしい」と話した。【山下智恵】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。