吉田圭秀統合幕僚長=防衛省で2023年3月23日、内橋寿明撮影

 自衛隊が7月1日に創設70年を迎えるのを前に、制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長(61)が、毎日新聞の書面インタビューに応じた。日本を取り巻く安全保障環境について「まさに法の支配に基づく国際秩序を維持できるか否かの分水嶺(ぶんすいれい)にあり、力による現状変更の試みを続ける中国・北朝鮮・ロシアと隣接する我が国は、その最前線に位置する」としたうえで、同盟国の米国や、自由や民主主義の価値観を共有する同志国との連携が「極めて増えていく」との考えを示した。

 質・量ともに急拡大している中国の軍事動向については「インド太平洋地域のみならず、国際社会における深刻な懸念事項」と指摘。「台湾海峡の平和と安定は、我が国周辺地域のみならず、国際社会の安全と繁栄に不可欠」だとし、国際社会が連携して対応する重要性を強調した。

 今年は、2014年7月1日に「集団的自衛権」の行使を限定的に認める閣議決定がされてから10年の節目でもある。吉田氏は「どの国も一国では自国の安全を守ることはできない」といい、米国や同志国との連携は「意義が大きく、戦略的なメッセージになる。3国間や多国間の演習などを積極的に実施し、連携強化を図っていく」とした。

 南西諸島で進む自衛隊の配備に関しては「抑止力・対処力を高めることにより、我が国への攻撃の可能性を低下させる」と説明。攻撃を受ける危険性が高まるという住民の不安の声を踏まえ、「引き続き、地元へ丁寧に説明しつつ、体制強化に係る取り組みを進めていくことが重要だ」とした。

 さらに「先の大戦で住民を守れなかった反省」に立ち、抑止力の強化を前提としつつも、武力攻撃が行われる事態になれば「侵攻を阻止し、排除する任務と同等に国民保護の任務は優先順位が高い」との認識を示した。

 また、加速する少子高齢化に対応するため、自衛官の採用について「抜本的な改革」の必要性を強調。具体策として、女性自衛官が出産や育児で退職しないで済む環境の整備や、男性自衛官への育児休暇の取得奨励などを例示した。また、人工知能(AI)や武器の無人化を積極的に進め、民間企業や自衛官OBの力も活用していく方針も示した。【松浦吉剛】

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