沖縄本島中部で女性に性的暴行を加えてけがをさせたとして、沖縄県警が5月、在沖縄米海兵隊の男性隊員(21)を不同意性交等致傷容疑で逮捕していたことが28日、捜査関係者への取材で判明した。県警は逮捕時に公表していなかった。25日には米軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)所属の米空軍兵(25)が少女に性的暴行を加えたとして不同意性交等罪などで起訴されていたことが明らかになっており、沖縄の米軍関係者による性的暴行事件の相次ぐ発覚に市民の怒りが一層強まる可能性がある。
昨年12月と今年5月に相次いで起きた米兵による性的暴行事件では、いずれも米兵検挙などの情報が沖縄県に共有されなかった。昨年12月の事件について県が報道で知ったのは米兵の起訴から約3カ月後の今月25日。県民への注意喚起に影響した可能性もあり、玉城デニー知事は28日、「強く抗議していきたい」と批判した。
日米両政府は1997年、公共の安全に影響を及ぼす可能性のある事件が起きた場合、米側が日本政府や関係自治体に通報する経路を決めた。沖縄での事件の場合、米側は中央レベルで在日米大使館を通じて外務省に、地元レベルで防衛省沖縄防衛局に伝え、防衛局が県や市町村に連絡する。
だが、2事件とも結果的に県への連絡はなかった。
昨年12月に起きた事件では、県警が今年3月に米空軍兵(25)を書類送検し、那覇地検が同月27日に不同意性交等などの罪で起訴した。日本政府は同日に外務次官から駐日米大使に綱紀粛正などを申し入れたが、沖縄県には伝えなかった。今年5月に発生した事件では県警がすぐに米海兵隊員(21)を逮捕し、地検が6月17日に起訴した。外務省は起訴に先立って同月12日に駐日米大使に同様の申し入れをしたが、これも県には伝えなかった。
上川陽子外相は28日の記者会見でこうした対応について「厳しい声をいただいており、不信感を招いていることについて重く受け止めている」としたうえで、「今後の重大事件に関する地元自治体への情報共有のあり方については捜査機関を含む関係省庁とも相談をしていきたい」と述べた。
一方、県警もこの2事件について米兵の検挙を報道機関に公表せず、県にも伝えなかった。捜査1課の山本大地次席は28日の取材に、非公表とした理由として「被害者のプライバシーの保護」を挙げ、「広報するかしないかは被害者のプライバシー保護や公益性、捜査への支障などを考慮して個別に判断している。広報しなかったものは県にも連絡していない」と語った。
那覇地検の小玉大輔次席検事も28日、起訴などの情報提供について「関係者の名誉やプライバシーへの影響などを考慮して慎重に判断している。我々から自治体に連絡することはない」とした。
玉城知事は「我々も表に出せない背景、事情、状況などについて、情報が伝わっていれば捜査に協力するのは十分可能だ」として、外務省や沖縄防衛局、県警などと情報共有態勢のあり方について話し合いを進める考えを示した。
在日米軍に詳しい沖縄国際大の前泊博盛教授(日米安保論)の話
米兵による過去の事件が、今になって続々と明らかになるのは異常だ。4月の日米首脳会談や16日に投開票された沖縄県議選への配慮があったのでは、と疑う声が上がってもおかしくはない。県に連絡しなかった外務省の対応も、知事に報告しなかった県警の対応も問題で、本来は米軍が直接、地元に伝えるべきだった。他にも米兵による事件が隠されているのではと疑念を持たざるを得ない状況で、なぜ県に情報が上がってこないのかを検証する必要がある。
【比嘉洋、喜屋武真之介、森永亨、平川昌範、森口沙織】
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