千葉県八街市で下校中の児童の列に飲酒運転のトラックが突っ込み、5人が死傷した事故は28日、発生から3年となった。関係者らの思いを代弁するかのような涙雨が降る中、現場の通学路には、花や飲み物を手にした人たちが次々と訪れ、そっと手を合わせて静かに祈りをささげた。【近森歌音、林帆南、合田月美】
事故現場付近は早朝から梅雨空が広がり、人通りは少なかった。しかし、現場には菓子や花束、缶ジュースが置かれていた。また、学校の登下校時間帯には、子どもたちを乗せた車が現場付近を行き来する様子も見られた。
千葉県佐倉市に住む団体職員の男性(35)は、雨が降りしきる中、手を合わせ、そっと目を閉じた。帰り際、「痛ましい事故を胸に刻んでおくために来ました」と思いを込めた。男性はこの日、登校する子どもたちの見守りボランティアをした後、現場に足を運んだという。
車内で手を合わせる運転手も
現場には、複数の人が訪れ、花束を手向けるなどして事故で犠牲になった子どもたちの冥福を祈った。トラックが現場の前で一時停止し、男性運転手が車内で手を合わせて軽く一礼をする場面もあった。
また、現場を通りかかった近くの男性(77)は、「(事故からの3年は)早かった」と振り返り、事故について「子どもは何も悪いことをしていないのに。飲酒運転をしたトラックがいけない」と憤った。
付近には事故後、道路を隆起させて車の速度を抑制させる「ハンプ」などが設けられた。一方で、近くの男性は「そこを通り過ぎれば、またスピードを出す車がある」と懸念をあらわにした。
一方、八街市役所では、事故発生時刻の午後3時23分に合わせ、職員らが黙とうをささげた。全館放送で事故から3年となったことを告げ、「犠牲となった方々へ哀悼の意を表すとともに、痛ましい事故の再発を防止するため、飲酒運転をしない、させない、許さないという強い思いを込めて黙とうを行います」と呼びかけた。職員らはそれぞれの持ち場で、幹部17人は会議室で整列して祈りをささげた。
北村新司市長(76)は「令和3(2021)年6月28日は八街市にとって決して忘れてはいけない日。いまだ飲酒運転はなくならないが、地域のみなさんの協力をいただきながら、子どもたちの安心・安全のため(撲滅に向けて)努力をしていきたい」と話した。
市教育委員会によると、犠牲になった子供たちが通っていた市立朝陽小ではこの日、亡くなった2人と同学年だった5年生と6年生がそれぞれ集会を開き、有賀享校長から命の大切さについて話を聞いた後、黙とうをささげたという。
進む市の安全対策
事故以降、八街市内の道路では通学路の安全対策が進められてきた。
2021年に国土交通省など3省庁合同で実施した全国一斉の通学路緊急点検で市内の危険箇所は150カ所確認された。その後、対策を進め、141カ所で対策を完了した。「残り9カ所は信号機設置などでもうしばらく時間がかかるが、しっかりと対策を講じていく」(北村新司市長)としている。
事故現場の近くには、車両に減速を促すため路面を盛り上げた「ハンプ」が整備され、時速60キロだった制限速度は30キロに規制された。歩道にはガードパイプや、グリーンベルト(緑色に塗装した歩行スペース)などが設置された。朝陽小と二州小にはスクールバスも導入。ハード面の対策に加え、地域や保護者による見守り活動も強化されている。
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