小林製薬(本社・大阪市)の紅こうじサプリメントによる健康被害が相次いだ問題で、武見敬三厚生労働相は28日、サプリの摂取との因果関係が疑われる死者が新たに76人判明したと発表した。同社は3月に死者を5人と公表していたが、以降は実態把握が難しいとして、今月27日まで厚労省に報告していなかった。武見氏は「小林製薬の判断により、死亡者数の報告をしなかったことは極めて遺憾」と強く批判した。
厚労省と小林製薬によると、3月下旬以降、死亡に関する遺族からの相談が170人について寄せられた。同社が調べたところ、うち91人は対象商品を摂取していなかった。残る79人のうち調査が終わったのは3人で、いずれも医師の診断で因果関係がないと確認されたという。
被害が出たサプリの原料からは、腎障害を引き起こす青カビ由来の天然化合物「プベルル酸」が検出されている。小林製薬によると、調査中の76人には、直接的な死亡原因が腎疾患の人もいれば、がんや脳梗塞(こうそく)など、他の疾患で亡くなった人も含まれるという。ただ、基礎疾患がある人の体力消耗などの原因となり、間接的に影響した可能性もあるとして、腎疾患に限定せず関連を調べている。
既に公表済みの5人は社内調査を終え、1人は対象商品を摂取していなかったことが判明した。残る4人のうち2人は「直接的な死因ではないが関連がないと言えない」、2人は関連不明と結論づけた。
厚労省は死亡との因果関係が疑われる事例や入院者数などを速やかに報告するよう小林製薬に求めており、都度その結果を公表してきた。しかし死亡事例は3月29日の5人から更新されず、厚労省が今月13日に問い合わせたところ、27日になって今回の報告が寄せられたという。
事態を重く見た厚労省は小林製薬に対し、医療機関への照会や分析の方法についても詳細に指示を出すなど、調査の進捗(しんちょく)管理に積極的に介入する方針。29日までに今後の調査計画を作成するよう指示した。
一連の問題を巡っては、健康被害の発覚から国への報告に約2カ月かかったことも問題視されている。厚労省によると、再び報告が遅れたことについて、小林製薬側からの具体的な説明は28日時点でないという。
意図しない成分が含まれていたとして小林製薬が回収しているのは「紅麹(こうじ)コレステヘルプ」など3製品。厚労省は原料のサンプルからプベルル酸と、2種類の未知の化合物を検出した。プベルル酸は腎障害を引き起こすことが確認され、未知の物質についても動物実験で影響が調べられている。日本腎臓学会がサプリを摂取した人を対象に実施した調査では、腎臓の機能が低下する「ファンコニー症候群」が多くの人にみられた。
小林製薬によると、今月26日現在、14万3000件の相談が寄せられ、1656人が医療機関を受診、289人が入院治療を要した。【肥沼直寛、奥山はるな】
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