焼き、フライ……いえいえ、刺し身でどうぞ。北海道白老町が道内初となる生食用ホッケの陸上養殖の実証実験に乗り出した。ホッケといえば火を通した食べ方が一般的だが、陸上養殖することでアニサキスなどの寄生虫がつく心配がなくなるという。漁業者の増収を図る狙いがあり、3年かけて事業の採算性を検証する。【平山公崇】
25日は、道栽培漁業振興公社伊達センターで養殖された29匹の親魚がトラックで同町虎杖浜にある水産加工場跡に輸送された。水槽に放流されると元気に泳いでいた。今後、白老沖の天然ホッケを100匹ほど追加する。
町が今年度から3カ年で取り組むのは「閉鎖循環型陸上養殖試験事業」。背景に海洋環境の変化による主要魚種の漁獲減がある。2013年度に約1万5000トンだった町内の漁獲量は22年度に約8300トンとなり、10年で約半減した。環境に左右されない新たな漁業として陸上養殖に着目した。
事業は北海道大水産学部の学生らが立ち上げた企業「AQSim(アクシム)」に委託する。虎杖浜の水産加工場跡に直径2・4メートル、水深1・2メートルの円柱形の水槽を設置。水道水で希釈し、菌を減らした海水を循環させる。低温を好むホッケの生態にあわせて、水温は12度ほどに保って飼育する。
初年度は1400万円を投じて、産卵からふ化までの生育のデータを集積する。順調に進めば来年2月にふ化する見込みという。25年度に種苗生産体制を確立し、26年度に水産庁の支援制度や町内の遊休施設の活用を視野に入れた事業化を目指す計画だ。
町農林水産課の安藤啓一主査は「『アニサキスフリー』で寄生虫が100%つかないのが最大のメリットです。いま、町の漁業は厳しい状況ですが、将来に向けて事業化の可能性を探りたい」と説明した。
事業で飼育を担う地域おこし協力隊員の川下正己さん(66)は、道栽培漁業振興公社伊達センターの元所長でホッケの飼育経験がある。「脂がのっておいしいホッケの刺し身を観光客の皆さんにも味わっていただけるように頑張りたいですね」と話していた。
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