人口減少により全国の水道料金は値上げを余儀なくされ、首都圏の一般家庭で月に1万円超となることがあるかもしれない――。
1カ月当たりの水道料金(20立方メートル使用)が2046年までにどの程度上がるのかを推計した研究結果が公表された。料金や現在と比較した値上げ率が推計通りになるわけではないが、値上げ自体は全国的に避けられない情勢という。
コンサルティングなどを手がけるEYジャパン(東京都)と有識者でつくる一般社団法人水の安全保障戦略機構(同)の共同研究。21年度を起点に、水道事業体(自治体)が46年度までに累積赤字を生じさせないため、必要となり得る値上げやその料金を推計した。
対象はデータがそろわない事業体などを除いた1243事業体。人口減少や節水により給水の収益が減少▽水道管などの設備の建設改良費が年に4%増加――などと仮定する条件を設定した。
その結果、46年度までに1199(96・5%)の事業体で値上げが必要となり、全国平均の1カ月当たりの料金は、21年度の3317円から48%増の4895円になった。
人口が減り、事業体の収入が減っていく一方、設備の建設改良に伴う減価償却や借り入れの支払いなどは続く。そして、利用1世帯当たりの負担が増えるため、値上げになるという流れだ。
人口減少率が高く、人口密度が低いと値上げ率が高くなる傾向にあり、21年度から1・5倍以上の値上げとなる事業体が特に多かったのは北海道、中国、四国地方。政令市は千葉市1・75倍▽堺市の1・49倍▽北九州市の1・48倍――の順に値上げ率が高かった。
地方別に料金が2倍以上となる事業体の割合を見ると、北海道13・5%▽東北11・4%▽関東・甲信越7・2%▽北陸4・4%▽東海6・3%▽近畿6・1%▽中国6・0%▽四国5・8%▽九州・沖縄5・3%――だった。
神奈川県を除く東京と近郊の1都2県でも2倍以上の値上げになるとされた事業体があり、中には月に1万7000円という町もあった。ただ、建設改良費は19~21年度の平均値を元にしているため、その期間に大幅な設備投資をしている事業体の推計が高額になっている可能性がある。
実際に大幅な値上げはあるのか。東北地方のある町の担当者は「今回示されたような大幅な値上げは必要ないと町では試算しているが、既に25年度以降の料金改定が検討されているのも事実。段階的な値上げを見込んでいるが、住民の生活もあり、そう簡単には上げられない。全国どこにでもある難題だ」と語った。
今回の結果はあくまで推計で、効率的な修繕の手法など、新たな技術の導入を含めた今後の対応によって料金の大幅な値上げは避けられる可能性はある。ただ、人口減少だけでなく、高度経済成長期に多く設置された水道管の更新など、水道事業を巡る課題は多い。
共同研究者たちは「水道インフラは持続性が危惧されている。経営が年々厳しくなる中で住民に更なる負担を求めるべきか難しい判断を迫られている。経営のあり方について事業者、住民、議会で活発な議論が前進していくことを期待している」としている。【谷口拓未】
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