横浜市鶴見区のマンション敷地内で元交際相手の大学1年、冨永紗菜さん(当時18歳)を刺殺したとして殺人などの罪に問われた同区の配送業、伊藤龍稀被告(23)の裁判員裁判で、横浜地裁は21日、懲役18年(求刑・懲役20年)を言い渡した。西野吾一裁判長は「被害者が抵抗する間もなく一方的に突き刺しており、強固な殺意に基づく犯行」と指摘した。
判決によると、伊藤被告は23年6月29日、鶴見区内の量販店で包丁1本(刃渡り約12センチ)を盗み、冨永さんが住むマンションに向かった。復縁を迫ったものの拒否されて、冨永さんの首や胸などを包丁で4回突き刺して殺害した。
西野裁判長は「遅くとも包丁を盗んだ時点で殺害も一つの選択肢として想定していた」と指摘。弁護側は「計画的な犯行ではない」と主張していたが、「全くの突発的、衝動的なものではない」と断じた。
その上で「復縁が困難となったことでやり場のない思いを抱いたことは理解し得る面はある」としつつも、「結局は自分の気持ちばかりを優先させた短絡的な犯行」と厳しく非難した。
伊藤被告と冨永さんは21年から2年余り交際していた。裁判では、事件のきっかけとなったけんかから執拗(しつよう)に復縁を迫った伊藤被告がわずか1週間で殺害にまで至った経緯が明らかにされた。
伊藤被告は13日の被告人質問で「別れたら何も残らなくなると思った。恨みが殺意に変わった」と説明。冨永さんの母親は17日の公判で意見陳述し、「あなたのは執着。愛なんてこれっぽっちもなかった」と語りかけていた。
冨永さんの両親は判決後、「(被告が公判で発言した)『どのような罰でも受け入れる』との言葉が本当なら控訴をせず判決を受け入れることになる。それを見届けたい」とコメントした。【横見知佳】
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