時給1500円未満で働く者が2823万人いるとしたフリップを掲げ、最低賃金の引き上げを訴える全労連の黒沢幸一事務局長(中央)=東京都千代田区で2024年6月20日、東海林智撮影

 2024年の最低賃金(最賃)改定を巡る審議が始まるのを前に、労働組合の全国組織、全労連(小畑雅子議長)は20日、厚生労働省などに全国一律の最賃制度実現や、最賃を1500円に引き上げることを求める要請を行った。最賃に近い額で働く人が増え、食料品を中心に物価上昇が続く中で、引き上げによる底上げを求める声が強まっている。【東海林智】

 最低賃金は法律で企業が労働者に支払わなければならない賃金を決めたもので、年度ごとに改定の審議が行われる。地域ごとに決められており、23年度の改定で初めて全国平均の時給が1000円を超えて1004円になった。東京は1113円に改定された。今年度の改定を巡る中央最低賃金審議会は、6月下旬から始まる。

 厚労省への要請後に記者会見した全労連は、最低賃金が低く自立した生活ができない、地域間の格差が広がっているなどの問題点を指摘。さらに、全国27都道府県の組合員の生活実態調査から計算したところ、最低限生活に必要な費用を得るには時給換算で1500円が必要であること▽生計費は大都市・地方都市に限らず地域による違いはほとんどなかった――ことなどを説明した。

 黒沢幸一事務局長は「生計費は各地で同程度必要なのに、地域間の最賃格差は東京都と岩手県では220円にも上る。最賃を一律にしなければ地方からの労働力流出が続き地方は疲弊する」と訴えた。さらに「時給1500円未満で働く人は約2823万人に上る」と説明し、1500円への引き上げが多数の人に影響を及ぼすとの見方を示した。

 また、都内で最低賃金で働く男女の労働者は、生活について「ダブルワークをしても蓄えができず、ケガや病気が心配だ」「電気代の高騰などで家計はマイナスになっている」と厳しい現状を語った。

 政府は30年代半ばまでに最賃を1500円に引き上げる目標を掲げているが、黒沢事務局長は「働いても食べていけないような最賃であってはならない。30年代半ばではなく、今すぐ必要だ」と話した。

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