広島の黒い雨雨域(右)や長崎の残留放射線の観測地点などを示す地図を示しながら署名活動について説明する本田孝也会長=長崎市で2024年6月20日午後2時5分、樋口岳大撮影

 長崎県保険医協会は20日、長崎の被爆体験者への被爆者健康手帳の交付を岸田文雄首相らに求める署名活動を始めた。7月末までに10万人を目標に集める。被爆体験者が被爆者手帳の交付を求めた訴訟の判決が9月9日に言い渡されることや8月9日に被爆体験者と岸田首相の面会が調整されていることを踏まえ、同協会の本田孝也会長は「首相は判決を待たずに政治判断で被爆体験者を救済してほしい」と訴えた。

 広島原爆投下後に降った「黒い雨」体験者84人を被爆者と認めた2021年7月の広島高裁判決を受け、国は22年4月から広島の区域外で黒い雨に遭った人への被爆者手帳の交付を開始。一方、長崎の被爆体験者については「降雨があった客観的な記録がない」として救済から除外している。

 原爆投下後の長崎でも多くの人が雨や灰に遭ったと証言し、米軍マンハッタン管区調査団が島原半島を含む広範囲で残留放射線を検出した。本田会長は「長崎も広島と同様に放射性降下物による健康被害が否定できない状況にあったのに、手帳をもらえないのはおかしい」と指摘した。

 県保険医協会は、会員の医師と歯科医師約1850人や全国の保険医団体などを通じて署名用紙を配布。用紙は同協会のウェブサイトからもダウンロードでき、一般の市民にも協力を呼び掛けている。問い合わせは同協会(095・825・3829)。【尾形有菜、樋口岳大】

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