避難生活中に肺炎で亡くなった父親について、災害関連死の申請をした男性=石川県穴水町で2024年6月8日午後1時49分、野原寛史撮影

 1月の能登半島地震の災害関連死をめぐり、石川県内の関係市町は18日、2回目の合同審査会を開き、新たに22人を認定すべきだと判断した。これで地震による死者は282人(うち関連死は52人)になる見通しで、熊本地震の死者276人(うち関連死226人)を上回りそうだ。

 石川県穴水町の80代の男性は地震後、避難生活の中で肺炎を起こして1月9日に亡くなった。持病は高血圧ぐらいで、元気に畑仕事もしていた。遺族は「もっとしてあげられることがあったのでは」との思いを拭えないでいる。

能登半島地震の災害関連死 症例・能登町

 遺族によると、男性は元日の地震直後、着の身着のままで自宅近くの高台に避難。その夜は断続的に揺れが起きる中、家族4人で1台の車に身を寄せた。男性は翌2日、いったん自宅へ戻る際、損傷した道で転んで頭を打ち町内の総合病院を受診。そのまま院内で避難を続けた。避難者が密集する中、待合室のベンチに座り、横になることもできなかった。70代の妻は「我慢強い性格だったから……」と振り返る。

 家族が自宅にあったバナナ1本とペットボトルのお茶を与えたが、男性はこの頃からせきが止まらなくなった。4日に県中部にある大学病院に入院したが、自力呼吸ができなくなり9日に亡くなった。

 1月2日生まれの男性は元日、孫たちに囲まれ前倒しで誕生日を祝った。妻は「あんなに元気だった夫がなぜ死ななければならないのか」と悔やみ「自宅にいれば亡くならなかったかも。もっと食べさせてあげていれば」と自分を責める。

 50代の長男は、父の死について災害関連死の認定を町に申請しているところだ。「関連死と認められれば(父の死は)『地震のせいだ』と気持ちの整理ができるのではないか」と母をおもんぱかる。【野原寛史】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。