148時間15分――。自殺する約4カ月前、福岡県春日市の市立小学校の新任教諭だった男性(当時24歳)の時間外労働時間は、過労死ライン(月平均80時間)を大幅に超えていた。文部科学省は学校の「働き方改革」を掲げるが、長時間労働は依然解消されず、若手を中心にメンタル面で不調を訴えるケースは少なくない。
地方公務員災害補償基金福岡県支部は、男性が2019年4月に新任教諭となってから約半年後の9月に自殺するまでの間、時間外労働時間を出退勤時刻表や関係者の証言を基に算定した。その結果、5月の大型連休明けから2カ月連続で月120時間を超え、自殺の1カ月前も86時間41分に達していた。医師の知見も踏まえ「長時間に及ぶ時間外勤務により、相当強い精神的、肉体的負荷を受けていた」と認定した。
教員の長時間勤務を巡っては、文科相の諮問機関「中央教育審議会」が19年、学校現場の業務のあり方について①学校以外が担う②教師が担う必要がない③教師の負担軽減が可能――などと分類し、削減を促した。だが、学校現場の「働き方改革」はなかなか進んでいない。
文科省が22年度に実施した勤務実態調査(確定値)によると、学校での1日あたりの在校時間の平均は小学校で10時間45分、中学校で11時間1分で、6年前の調査と比べ、それぞれ30分ほど減少した。ただ、国の指針で時間外労働時間の上限とされる「月45時間」を超えるとみられる教員は小学校で64・5%、中学校で77%に上り、依然として深刻な状況だ。
長時間労働が解消できない中で、精神疾患を理由とする離職者が増えている。24年3月に文科省が公表した「学校教員統計調査(確定値)」によると、21年度に精神疾患を理由に離職した公立小中高校の教員は950人で、前回の18年度より168人増えて過去最多を更新した。学校種別に見た内訳は、小学校569人(前回より112人増)▽中学校277人(同35人増)▽高校104人(同21人増)――で、いずれも過去最多だった。【山口響】
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