記者会見する前田牧弁護士(左)と光永享央弁護士=福岡市中央区で2024年6月18日午後1時20分、吉田航太撮影
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 福岡県春日市の市立小学校の新任教諭の男性(当時24歳)が精神疾患を患い自殺したのは長時間労働と指導担当の教諭によるパワハラが原因として、男性の遺族が市と県に計約9000万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こした。遺族の代理人弁護士が18日に福岡市内で記者会見を開き、明らかにした。提訴は11日付。

 訴状によると、男性は2019年4月に新任教諭として配属され、3年生の担任となった。1カ月目から長時間労働を強いられたとし、自殺までの4カ月間の時間外労働時間は月平均100時間で「過労死ライン(月平均80時間)」を超えていた。

 また、男性は指導教諭から運動会の出し物の「エイサー」の振り付けを覚えていないことなどを理由に同僚の前で繰り返し叱責され、精神疾患になったと主張。同年9月には、児童が宿題を忘れたことを巡って指導教諭から謝罪させられ、男性は立ったまま泣いていたという。男性は、その日に自殺を図り、翌日に死亡した。

 地方公務員災害補償基金福岡県支部は21年11月、長時間労働や必要な範囲を超えた厳しい叱責と自殺との因果関係を認め、公務災害(労災)に認定した。ただ、遺族の請求に対して22年3月に開示された認定理由書は黒塗り部分が多く、指導教諭による具体的な叱責内容などは不明だという。遺族は県と市に謝罪などを求めたが、応じなかったため、提訴した。「校長と春日市が安全配慮義務に違反したことは明らか」と訴えている。

自殺した新任教諭がスマートフォンのカバーの中に残した遺書=福岡市中央区で2024年6月18日午後1時50分、吉田航太撮影
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 男性は自殺の約3~4カ月前、親友に無料通信アプリ「LINE(ライン)」で「超絶ブラック」「パワハラ受けてます(笑)」などと送信。遺書には「人のためにと思ってついた職業。あこがれた仕事(中略)大好きな子どもなのに……こんなことなら生きていても仕方がない」などとつづられていた。

 代理人弁護士は会見で「採用から半年の間に何があったのか。誰にも相談することなく一人で悩み、諦めなければならなかったのか。なぜ起こったのか知りたい。学校から一切謝罪はもらっていません」などとする遺族のコメントを読み上げた。その上で弁護士は、学校は熱心な教師に頼る形で長時間労働を強いていたと指摘。「男性は指導教諭から攻撃され、周囲も止めなかった。異常な職場で新人だった男性を追い詰めた。訴訟を通じて何があったのかを明らかにしたい」と話した。

 春日市教育委員会は取材に「訴状が届いておらず、コメントできないが、未来ある若い教員が命を失ったことは無念でならない」、県教委は「訴状が届いておらず、コメントできない」としている。【山口響、志村一也】

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